糸くず

恐怖のまわり道の糸くずのレビュー・感想・評価

恐怖のまわり道(1945年製作の映画)
3.0
「省エネ演出」のお手本にはなるかもしれないけども、それ以外は特にどうってことのない普通のフィルムノワール。

上映時間は一時間ちょっとであるが、トム・ニール演じるアルが事のいきさつを語りで説明するナレーション映画なので、非常に長く感じる。

とにかく大金がほしいのか人を支配したいのかよくわからないベラ(アン・サヴェージ)の存在はかなり不気味であるが、運命の理不尽や残酷よりも話を前に進めるための都合を強く感じてしまう。多くの人が賞賛している、「死体はどこ!?」と突然目を覚まして話し出す場面も、わたしには唐突さしか感じなかった。

アルが恋人に電話する場面の電話交換手たちや、夜道を歩く二人を包む異常に濃い霧に、独特の過剰さを感じるものの、見ている者の世界をゆさぶるほどのものはないように思う。

蓮實重彦がセレクトしたからといって、むやみに持ち上げる必要はないだろう。

〈蓮實重彦セレクション ハリウッド映画史講義〉
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