うめ

アバウト・タイム 愛おしい時間についてのうめのレビュー・感想・評価

3.9
 ちょっと冴えない青年ティムが過去にタイムトラベルするパワーを使って、自分や家族の人生を良くしていこうと奮闘するコメディ。監督は『ラブ・アクチュアリー』や『パイレーツ・ロック』のリチャード・カーティス。本作を以て監督を引退することを宣言している。

 まず、素晴らしいキャストが集まっていることが嬉しい。ラブロマンスのお相手としては文句なしのレイチェル・マクアダムスに、イギリス俳優界からビル・ナイ、リンゼイ・ダンカン、トム・ホランダー、話題作に続々出演のマーゴット・ロビー…そして何と言っても、主役のドーナル・グリーソン。長身でかっこいい役も演じられるだろうが、今回は冴えない青年役(笑)それがよくはまっていた。これからの活躍が期待される俳優だ。

 ストーリーの前半はティムがなんとか好きな子とうまくいくように、タイムストラベルを何度も繰り返す様子を可笑しく描いている。現在で失敗したことを教訓にして、過去に戻る。また失敗したら、戻る。その繰り返し(笑)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムトラベルのように、本当に小さなことで過去と現在を行ったり来たりするのが面白い。(ちなみに、今作のタイムストラベルのパワーは自分の過去の範囲でしかタイムストラベルできないことになっている。)

 後半はティムの家族と人生のためにタイムストラベルをする。前半と同様に、タイムストラベルを繰り返すのだが、ティムがタイムストラベルをしてうまくいった事とうまくいかなかった事が色々生じる。そうした経験を経て、ティムはタイムトラベル最大の秘訣に辿り着く…。この後半がとても良かった。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も結局そうなんだが、タイムストラベルをして気づくのは、「過去を変える」ことよりも「自分を変える」ことが大事なのだということ。そしてこの作品ではそうすることによって、「皆がタイムトラベルをしているのだ」という一つの答えのようなものに行き着く。

 …あぁ、もっと色々思ったのだが、ネタバレになるからやめておこう。とにかくラストのメッセージはとてもシンプルでわかりやすい。だけど、引退作としてはとても力強いメッセージだと思う。簡単そうで、難しいことだけど、私もやろう、タイムストラベル。
うめ

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