鰤鰭

アバウト・タイム 愛おしい時間についての鰤鰭のネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

観る側に対しても劇中登場人物に対しても救いしかない、手放しで幸福感を味わえる最高映画。

タイムトラベル設定ってアクションとかサスペンスとかによく出てくるけど、この映画では誰もがあったらいいなと思う力を、それやるやる〜的に使うから楽しい。

ティムと同じ能力は使えない私達に、1日を2回繰り返すことで緊張して初見では気づけないことに目を向けられる、さらには本来繰り返す必要もなくただ二度と同じ日は生きられないことを噛みしめながら毎日を大事に過ごす、というメッセージを映画を見るだけでしっかり伝えてくるし、さらにはティム本人も能力を封印して私たちと同じ人間として人生を過ごすようになるラスト。タイムトラベルを主軸に添えてるのに、そんな能力なくて良いんだ!繰り返せないからこそ日々が大切なんだ!って映画全体で否定してくるの凄い。

能力者主人公物にありがちな、力の代償とか何かを犠牲にするとか力を捨てるとか、そういった話に物語が逸れず、一貫して力を使える自分ができうる最善を選び取っていく感じがリアルだし納得感がある。必要以上にドラマチックに描いていないところが◎
力に対して否定とか自虐的になることもなく、ちゃんとそれで手に入れたものは最後までありがたく享受してるし、この力があったから気づけた視点があるというところに落とすから、能力行使に対して後ろめたさが無い。

あと脇役のフィーチャー具合、使い所が絶妙で天然のおじさんとか舞台作家とかマーゴットロビーとかヴァネッサカーヴィーとか本当皆いい働きしてる。
妹とメアリーが良い子過ぎる。

雨の結婚式をやり直さなかったり、あんなチートの力を持ってても、これでいいんだ、っていう明確な幸せの判断価値基準があるのが素晴らしい。こんな力もし自分が持ってたら、ありもしない理想を追求して、満足することの無い欲に落ちていくと思うし、ましてや最後はやり直すことすらやめるのが本当に善い主人公だなぁ、と思う、だからこそのあのハッピーエンドに納得できる。当たり前の日常が何よりも愛おしい時間なんだよってタイトル通りのメッセージが伝わってくる。

ラストでいろんな人がそれぞれの人生を生きている感じが、自分なりの人生の時間を大切にしようとさらに思わせる。

誰でも観るだけで人生救われたり肯定されたり、少し幸せな気持ちになれる映画だった。

【鑑賞回数】2
【鑑賞履歴】
・2020/04
鰤鰭

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