Kumonohate

東京の恋人のKumonohateのレビュー・感想・評価

東京の恋人(1952年製作の映画)
3.8
原節子と三船敏郎の主役コンビを取り巻くキャストが、森繁久彌に清川虹子に藤間紫という、顔ぶれだけ見ても一体どんな内容なんだと、鑑賞前から興味津々だった作品。

で、答は、コメディ・タッチの人情ドラマ。そこに、戦争の傷跡や復興への希望がほどよくまぶされている。そして、当時は隅田川を船が通過する度に開閉していた勝鬨橋が、舞台装置として印象的に何度も登場する。

原節子の役柄は、ベレー帽を被った街角の似顔絵描き。彼女を取り巻く仲間には、戦災孤児と思われる靴磨きの3少年(小泉博ほか)。みんな貧しいけれど明るく一生懸命生きている。ただ、そんな中に、体を悪くして生きる希望を失っているコール・ガール(杉葉子)がいる。店頭展示用の偽宝飾品作りを生業とする男(三船敏郎)は、ひょんなことから彼らと関わりを持ち、似顔絵描き(原節子)に惹かれてゆく。まるでミュージカルみたいな舞台設定。ホロリとさせるところもあるが、全編にわたってライトな笑いが散りばめられており、原節子の主演作としては珍しい部類に入ると思う。

しかし、その存在感は圧倒的。原節子がコメディエンヌとして優れているとは思わないが、他の出演作同様、やはりここでも彼女の大きな目が物を言う。森重&清川夫婦が繰り広げるドタバタの中、騒ぎを意に介さなかったり、騒ぎに呆れたり、騒ぎに巻き込まれたりするときの心情を、“目の演技”でもって表現している。

楽しい作品。
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