ミシンそば

家族の灯りのミシンそばのレビュー・感想・評価

家族の灯り(2012年製作の映画)
3.1
100歳を超えて現役だったポルトガル映画界の大巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ監督作。
このあと短編を数本撮っているけど、長編映画としてはこれが遺作となったらしい。
100歳を超えた高齢で、長編を3本、短編を4本も撮ってこれが最後の長編。
前置きが長くなったけど、オリヴェイラ作品をここから観るのは、この上ないレベルでの悪手だと、観終わって確信せざるを得なかった。

マイケル・ロンズデール、クラウディア・カルディナーレを老夫婦とし、息子夫婦(息子は8年も失踪(実際は投獄)と言う)にはオリヴェイラ作品常連女優のレオノール・シルヴェイラと、同じく常連で実孫のリカルド・トレバを配し、出番こそ少ないがジャンヌ・モローも出演している。
それらの名優が、オリヴェイラによって脚色を加えられたラウル・ブランダンの戯曲を、戯曲であることを崩さないように慎重に作ったような映画であり、そもそも映画を観ていると言う感じになれない、静かすぎる作品だった。
正直者、誠実な者がバカを見るような展開に終始する意地の悪い話であることも、自分にとっては否と論ずる由縁だ。

ただ、長回しとセットのキレイさ、灯りの使い方とかはやっぱり見えてるヴィジョンの広さとかを感じられる精妙さ、計算されてる感とか凄いあった。
思うに、オリヴェイラの旧作をもっと観ていればこの作品の受け止め方も大分変ってきたんだと思う。それだけに勿体ないことをした。
ただサブスクとかにも無ェし、日本で観れる作品も限られてんだよなぁ…せめて「アブラハム渓谷」は観てみたい。