福福吉吉

ジョバンニの島の福福吉吉のレビュー・感想・評価

ジョバンニの島(2014年製作の映画)
3.5
第二次世界大戦中の色丹島に住んでいた純平と寛太は、戦時中でも元気に暮らしていた。しかし、終戦とともにソ連(※)軍の侵攻が開始され、色丹島はソ連軍の支配下に置かれ、ロシア人が色丹島に移住してきて、家屋などを奪われる。そんな中でも、純平たちはロシア人の子供たちと交流し、親しくなっていく。
(※ソビエト社会主義共和国連邦)

ストーリーはとても分かりやすく、戦時中及び戦後の色丹島に生きた人々の生活を丁寧に描いており、また、中立性の高い描写で、純平や寛太たちの子供たち目線の思いが伝わってきました。

前半はとても明るいタッチで描かれていて、色丹島にロシア人が移住してきて、家屋などを奪われる憂き目に遭いながらも、純平と寛太の目の前の人生を楽しく生きる姿はとても微笑ましく思いました。また、純平はロシア人少女のターニャと親しくなり、恋に落ちる様子も子供らしく純粋で良かったと思います。

後半になり、色丹島から日本人が追放され、樺太の収容所に送られてから、ストーリーがシリアスに傾いていきます。父に会うために樺太の収容所を抜け出す純平と寛太ですが、寛太の寂しさが伝わってきて、印象に残りました。

キャラクターとして純平の叔父である英夫がとても生き生きとしていて、生き延びるための狡猾さがあって面白かったと思います。多分、私が戦中に生きていたら英夫に近い行動をとると思います。生きることを大事にするか、誇りを大事にするかの問題であり、英夫は「生きること」を、純平の祖父や父は「誇り」を選んでおり、どちらが悪いとは感じません。

戦争は人の生き方を歪ませるものであり、人があってこそ国があることを、国や人種の偏見無く親しくなれる子供たちの姿を観て思いました。
アニメーション作品でとても観やすいので現代の子供たちに観て欲しいと思います。

鑑賞日:2022年10月7日
鑑賞方法:BS/CS 日本映画専門チャンネル
福福吉吉

福福吉吉