朱音

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅の朱音のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

この映画について多く語ることはない。
ただただ素晴らしいです。

旅を通じて子が親を再発見する映画。
キャラクターたちの実にリアルでユーモアに富んだ佇まいが魅力的。役者の芝居。ウェルメイドな各エピソードとそのの繋ぎ方。実に見事。

ネブラスカはアメリカ人の間でも「何もない土地」と揶揄されているそうで、何もないものを求めてゆくこの旅の舞台に相応しい地だと思う。
何も残せなかった父親と、何者にもなれない次男。


お母さんのキャラクターが強烈で、それでいて爽快。何度も顔を顰め、笑い、そして泣かされました。彼女でなければ一家は纏まらなかったでしょう。それを感じさせる、まさに肝っ玉母さん。
ケイトと対象的なペグの存在もとても良かった。


兄弟がコンプレッサーを盗み出すシーンの痛快さと、その直後にやってくる間抜けな結末も最高だ。


ほんの少しだけ、寄り添ってあげることで起こせる奇跡がある。
デイヴィッドの損得勘定を抜きにした父へのプレゼントがかつての故郷に錦を飾る凱旋のラスト。父は尊厳を取り戻し、息子はそんな父の姿を誇りに思う。よくよく考えてみればおかしな話なんだよ。息子達に何かを残したいというのがウディの本望だったわけで、息子が与えてしまったら本末転倒なんだよね本当は。だけど良いじゃないか。彼らの表情が全てを物語っている。

ウディを馬鹿にしたエドや街のみんなの呆気に取られたような表情と、ペグの思い遣りが感じられる表情の対比がとてもいい。

ラスト、街を抜けた通りで、父から息子に、運転を交代するカットで幕を閉じる。その瞬間受け継がれたバトンのように、デイヴィッドの真の人生が始まるのかもしれない。こんなの完璧だろう。
本当に素晴らしい映画を体験した。
朱音

朱音