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ローン・サバイバーのmofaのネタバレレビュー・内容・結末

ローン・サバイバー(2013年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【戦争で正義は描けない】

主人公含め、アフガニスタンへと出向いた兵士は、ありきたりな人物像。
軽口と冗談で、恐怖を隠しながら、鋭い視線で、戦況を分析する。
 それでも、多勢に4人では、劣勢である。

激しい戦闘シーンがリアルに繰り広げられていく。

 本部に連絡しようとも、電波が悪く、応援も呼べない。

 兵士の一人は、電波を手に入れるために、命を捨てる。

 そして、ただ一人の生存者と、それを援護する以意外な存在。

お~!!これが、実話か・・・・・。


・・・と感嘆はするが、
それ以上に、

「電波が届かず連絡がとれない」とか
「救出するアパッチがいない」とか。

なんというか、人の命をかけているはずなのに、このズサンな計画は何なのか・・・と
思えてならない。
 そもそも、これは、作戦として無理があるんじゃない・・と素人目で感じてしまう。


 命令に従い命をかけて、なんとか電話で連絡をしても、
重要な人間に到達するまでのタイムラグ。

 アフガニスタンでは、多くの人間が死んでいる。
成程。人が死ぬという状況に、ある意味、鈍感になっているのか。

・・・と思ってしまう。

 アメリカ人兵士は4人といえど、
タリバンの人間を、一体何人殺しているのだろうと。
 実話に基づく映画であるならば、
もう少し、その辺りを繊細には描けなかっただろうか。

 最後に実際の兵士たちの写真が流れ、
最後に兵士を救ったアフガニスタンの、タリバンに敵対する人物が、生存者兵士と笑顔で握手している写真が流れていく。

 それは、まさに、愛国心でありこの戦争の正当性をアピールしているに違いない。

事実、アフガニスタンすべてが・・・ではないのだと知ることが出来る。
同じアフガンでも、タリバンに敵対している人たちもいる。

 けれど、そう知ると同時に、この兵士に殺されたタリバンの中にも、
すべてが同じ「悪」だとは思えなくなる。
 彼らに殺された人の中には・・・・と考えてしまうのだ。

もっといえば、兵士を救出にきたアメリカの軍用機が、村を襲う。
兵士を助けた村人たちと、タリバンをきちんと見分けているのか、疑問である。
 

この映画は、実話に基づく映画である。
空想の世界の、空想の話ではない。
 ゴジラの足で、一体何人が死んでいようとも、それはそれで、「映画」なのだ。

けれど、
この映画は、実話である。

 視聴者を引き離さないために、誇張した部分があるなら、
実在する兵士のためにも、繊細に描くべきであったし、

 この映像すべてが、事実であるというのなら、
この映画が訴える愛国心や正義に、違和感を覚える。

 
 いくら戦争とはいえ、
あれだけ殺しておいて、「正義」とは口が裂けてもいえない。
戦争を題材に、「正義」を描ける時代は終わった。
 「正義」という言葉が・・・もしくは、
「悪」と「善」が曖昧な世の中である。

 世界は、混沌と複雑さで、線引きさえも難しい。
この映画の題材もまた、その象徴である。
 にも関わらず、この映画を、「正義・愛国心」と捉えようとしているから、
違和感が残るのだ。

 ズサンで、失敗ともいえるこの作戦を、
美談にしたいと願い作られた、アメリカ万歳映画。

 そう言い切ってしまうのは、辛辣すぎるか。
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