紫のみなと

オール・イズ・ロスト 最後の手紙の紫のみなとのレビュー・感想・評価

4.0
公開時、割と話題になっていて、当時の私は老人になったレッドフォードはあんまり観たくないなぁと思っていたが、どこか惹かれるものがあり鑑賞した。インド洋にて航海中、目覚めると突如ヨットが浸水しかかっている。主人公はしかし「oh my god‼︎」と叫ぶこともなく「shit!」と悪態つくこともなく、淡々と目の前の作業を続けていく。私達はただ、穴の空いた船上で主人公の取る知識と経験に基づいた行動を、この作業はこれに繋がるのか!と感心しながら観ていれば良い。ラストがどうなるのか勿論考えない訳ではないけど(要は助かるか、助からないのか)先読みする必要は全くない。主人公は、困難に遭った時人がどういう態度で対処していけばいいのかを教えてくれる。主人公の根底にあるのは海や自然界に対する畏敬の念であり、だからこそ、ふつうならパニックを起こしたり発狂しかねない極限状態と孤独の中で、あんな風に静かに戦い続けることができるのだと思う。ただ、勝ち目のない戦いを続ける老人の姿に、本当なら泣きっぱなしで観ることもできるはずたが、戦い方が素晴らしく、人生が凝縮された8日間、生き様を見せつけられているようで泣いている場合じゃない。顔に年輪の刻まれたレッドフォードが本当に素晴らしかった。レッドフォードは老人になっても最高やんか、と激しく感動したのでした。