せみ多論

シンデレラのせみ多論のレビュー・感想・評価

シンデレラ(2015年製作の映画)
3.1
いわゆるおとぎ話のシンデレラそのままなのでお話自体にさしてどうこうということはなかったように思いました。

良かったところでまず第一に映像ですかね。全体を通してどのシーンもとても綺麗で、恐らくCGもふんだんに使われているのか、素人目に見ても、ものすごく力を入れていると感じさせる圧倒的な映像美。これは本当に素晴らしいと思います。
ただ映画としてよかったのはそれくらいな気も…話自体はそのまんまですからね。

個人的に納得のいかなかった点は、ラストの名前を告げるシーン。さんざん王子に名前を教えずに来たのに、引っ張っておいて「シンデレラです」はないんじゃないですか。
シンデレラは継母達がつけたあだ名でしょう。実の両親がつけたレラという名をを何故名乗らないのか。直前に継母に対して、今までもこれからも母ではないと言い切っているのに意味が分かりません。
深読みして解釈すれば、そういった蔑まれた名前であえて胸を張るという、健気さや困難に対する強さ、と受けとることもできるとは思いますが、レラと行ったほうが見ている方としても新しさがあるし、名前を隠すことを引っ張って来た甲斐があると思ったので残念でした。

もう一点、継母役のケイト・ブランシェットがとてもいい表情をされる。
役柄上、意地悪な表情はもちろんながら、時折見せる寂しげなような瞳の演技がとても素晴らしく、鑑賞中、もしかしたらこの意地悪な継母にスポットを当て、今までとは違った視点のシンデレラが展開されるのかなと期待しましたが違いました。
ただ単に、ケイトの演技がずば抜けて良かったというだけでした。レラの父が生きている間の演技、レラと父の様子を見ているときの寂しげなような演技、父の死後のいじわるな演技。全部違います。ただ単に意地悪なだけの継母ではなく、そこには欲深く嫉妬深いのだけれども、ものすごく人間臭い、彼女は確かにヴィランではあるのだけれど、とても惹きつけられる様なキャラクターがあると思います。
もちろん個人的な感想ではありますが、今作で最も素晴らしいのは継母を演じたケイト・ブランシェットで間違いないと思います。

だからこそ彼女にスポットを当てた作品であったら、確かにそれは原作とは異なる異説になってしまうとは思うのですが、もっと印象深い作品になったのではないかなぁと思いました。

あくまで私のひねくれた感想でした。

もちろん本家シンデレラとしてみるには申し分ない作品だと思います。お勧めです。
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