あーや

花咲くころのあーやのネタバレレビュー・内容・結末

花咲くころ(2013年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

グルジア(現ジョージア)の作品です。グルジアの映画というと長年観たいと思っている「放浪の画家 ピスロマニ」がぱっと思い浮かびますが、生憎まだ観れておりません。。しかし最近は他にもいくつかDVDの出ている作品があるようですね!意外な映画大国でした。死ぬまでに何としても行かなくちゃ!
今作はグルジア独立後に始まった内戦の最中、1991年の夏からのお話です。長い黒髪が美しいナティアと切りそろえられた黒髪おかっぱ頭のエカというふたりの女の子が主人公です。グルジアの女性達は黒髪が多いのですね。はっきりした顔立ちと美しい黒髪が妖艶でした。しかし彼女たちを取り巻く人々の顔には笑顔がない。家族の食卓では談笑する事などなく、いきなり父親と母親が殴り合う。食べ物も食糧不足のため安物のパンと豆料理の毎日。学校に行っても女教師はピリピリしていて生徒へ簡単に罰を与える。唯一の楽しみは、親の居ぬ間のガールズトークと隠れて吸うタバコ。しかし親が帰ってきた途端、忙しなく片付けて“いい子”に戻らなければならない。この時代のグルジアの人達は大人も子どもも心に余裕がなく、いつも切羽詰まっていたようですね。主人公2人のような年頃の女の子にもなればセックスに対して興味がわくのが普通だが、それは男の子も同じ。つまり女の子たちはレイプされる危険もある。ある日、ナティアの恋人ラドが彼女に「身を守るために持っておいてほしい」とソ連製のピストルと弾を渡した。彼からの優しさとしてピストルを受け取ったナティア。初めて本物のピストルに触れたナティアははしゃぎ、同時にこれまで彼女が持てなかった強さを得た。ナティアは親友であるエカにもピストルを見せびらかす。エカは複雑な表情を浮かべつつピストルを持たせてもらった。ラドは「次に戻った時に結婚しよう」と告げてナティアを残して出掛けてしまった。ところがラドが不在の隙に、同じくナティアに想いを寄せていたコテという男がナディアに迫ってきた。最初は笑いながらコテを無視していたナティアだが、ある日コテに車でさらわれてしまう。そしてあろう事かその数日後に2人は結婚するのだった。本物の愛はあとから付いてくるものだというコテの説得を信じて結婚するナティアを素直に祝福できないエカ。しかし「親友なら祝うべきよ」というナティアの一言で意を決したエカはグッとグラス一杯のお酒を飲み干し、自ら祝福のダンスを踊り出す。無表情、でも情熱的にステップを踏むエカ。親友を心配する故にエカの心はまだ整理できていない。それでも祝福して欲しいという親友たっての願いをかなえるためにひたすら踊るエカ。周囲の祝福ムードと彼女の固い表情の温度差思わず涙が出ました。しかし観客の誰もが予想していたように若くしての結婚は破綻も早かった。コテの家族と同居するナティアの元をエカが訪れた時には喜んでくれたが、ナティアの口からは結婚生活の不満ばかりがこぼれる。そしてある日、久しぶりにエカと実家へ遊びに帰ったナティアは街に戻ってきていたラドと再会する。そしてこの再会がコテにバレてしまい、ついに事件が起こる。そうして怒りに狂ったナティアはラドのくれたピストルでコテに復讐しようとするがエカが必死にナティアを説得し続ける。実はエカがナティアにピストルを渡そうとしない裏にはエカの父親の過去が密接に関係していたのでした。ナティアも説得して全てが落ち着いたあと、エカも自分の父親と対峙することを決意し刑務所へ向かう。その時のエカの表情から滲み出ていたのはピストルから得られる肉体的な強さではなく、ピストルを手放すことで得られた精神的な強さでした。
2人ともまだたったの14歳なのに、酒もタバコも殺人もセックスも結婚も偽物の愛もピストルも、全て彼女達の身近に存在していた時代。何もわからないまま彼女たちは流れに身を任せて享受し、幼い感覚だけを頼りに手探りで危うく生きてゆく。人生を花で例えたら一番可憐に美しく咲いているべき年頃だったにも関わらず、生まれた時代と周りの大人達に翻弄されたふたりの少女の物語でした。
あーや

あーや