儒学の祖・孔子の生涯を描いた伝記映画。この伝説上の人物を、チョウ・ユンファが演じ、見ごたえがある。
紀元前の中国・春秋戦国時代、理想を実現すべく、あくまでも現実の国政にたずさわろうとする孔子だが、時代の激流に翻弄され、やがて祖国を追われ、流浪の旅に出ることにやる。
中島敦は「弟子」のなかで、孔子を「この人はどこに出しても大丈夫な人だ」というふうに描写している。つまり、浮世離れした仙人然とした人物ではなく、体力武力とも人並み以上にあり、風貌も立派で、ごくごく常識的な意味において、魅力的な人物であったと。この意味からして、チョウ・ユンファのキャスティングは当たっていると思う。
予備知識抜きには分りづらいストーリーで、とりわけ後半、有名な弟子である顔回や子路が亡くなるあたり、バタバタの展開なのがもったいない。
とはいえ、全体的に力の入った壮大な歴史絵巻だと思う。個人的に、孔子と老子が対話するシーンはけっこう興奮した。