めばち子

冬冬の夏休みのめばち子のレビュー・感想・評価

冬冬の夏休み(1984年製作の映画)
5.0
ホウ・シャオシェンの『アマルコルド』でありながら、その無常観によって、本作をただの子ども映画だと思う人はいないだろう。
特に主人公の母の命と引き換えとなる知恵遅れの女性の胎児の死の、真の意味を知るのが主人公の幼い妹だけであるという点(だからラストがとてつもなく感動的なのだ)に本作の凄みがある。
その前の小鳥の死に対する主人公の態度。ここでも特権的記号である列車の往来や走行音が、シームレスな物語を断絶させ、作品にただならぬ緊張感を与える。
階段や足のショットに小津を見る人も多いだろうが、むしろこの一見すると何もない平凡な日常の、皮膜一つ隔てたところに常に死が横たわっているという点にこそ小津との類似点を見るべきだろう。
その外見とは裏腹な、底知れない恐ろしさに満ちた傑作だ。
めばち子

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