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冬冬の夏休みの346のレビュー・感想・評価

冬冬の夏休み(1984年製作の映画)
5.0
あまりに夏らしいことをしてなかったので、8月31日。駆け込むようにして観た夏は、一生忘れられない夏となった。いや、正確には忘れてしまっていた本当の夏がそこにあった。

そしてようやく理解する。少年にとって、「理解できないこと」と「抗えないこと」は、世界の終わりであって。そこに落ちてしまわぬよう、境界線の内側で怯えながら生きていたからこそ、あの頃の日々には、生きているという実感がともなっていたことを。

また一方で、その境界線を外側に押し広げる無茶や、無謀も、あまりに理解しがたい死という概念に怯えていたからこその反発であって。文字通り命を賭けることで、自分の命を確かめるような意味があったんだろうな。

そんな境界線上の綱渡り。傷つき、泣き、笑い、歌いながら得た経験に勝るものなんてあるのだろうか。

そんなことを考えていると、もしかしたら本当に泣けたことも本当に笑えたこともあの頃にしかないんじゃないだろうか。と、悲しくなって少し落ち込んでしまうぐらいに。この映画には、大人が置き忘れてしまった少年、少女時代のすべてが焼き付いてありました。

お父さん役のエドワード・ヤンにもなんだか泣けてしまう。
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