ヨミ

パージのヨミのネタバレレビュー・内容・結末

パージ(2013年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

倫理って大事だねという。
「万人の万人に対する闘争」を1晩限定で意図的に作ることにより、残り364日を平穏に過ごそうねということらしい。なら国家も社会もいらねーじゃん!とホッブズが激おこになるかもしれない。だから「パージ」中はやはり国家は停止する(しかし逆に、「パージ」自体が制度的な基礎付けを持っているのは確かなので、やはり反ホッブズ的なのかもしれない)。

チャーリーがいい子なので好き。倫理的だしクリエイティブだし。なので彼が逃げたひとを助けたときに「いいぞ!」となった。
「弱者死すべき」という考え方が敷衍してしまっている現在(それは某メンタリストなどに代表されている)において、「パージ」的なものを導入すると、本作のようになるだろう。社会的に無用なものは排除されて然るべき、なる論調は仮に思っていたとしても本来は、人倫によって表明されない類のものだ。それが何の恥ずかしげもなく、または「正しい面も含む」とすら受け取られる最悪社会が到来している今は、間違いなく「パージ」前夜と言えるのではないか。本作をそういう世界の肯定と見るよりは、ぼくとしてはそういう世界へのアイロニーが込められている、そういう世界だと全員死ぬよという話だと捉えたい。

最終的にお母さんが殺そうとしてきたひとたちを許す、という展開は「富めるものは余裕があるぜ」という面すら映していて、なんて残酷な映画だろうと感じた。
ヨミ

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