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ニシノユキヒコの恋と冒険の&yのレビュー・感想・評価

ニシノユキヒコの恋と冒険(2014年製作の映画)
4.3
【2014/2/12:渋谷HUMAX】不完全な人たちの、可笑みに満ちた恋愛群像劇、と言ったらいいのかな。
井口監督の掴みドコロなさげ演出にガッチリ摑まれ、猫の怪演に息を飲み、「東京ラブストーリー」の鈴木保奈美的な本田翼のセリフに顔を赤らめ、ナニかあったのね?なオノマチさんにニヤリ、江ノ電でのユキヒコの表情にちょっと泣けた。
女性の求めるものが全てわかってしまう、ある意味超能力を持ったユキヒコが、実は最も歪な存在かもしれない。一見完璧にも見えるけど、生きてる頃からなんだか実体のない幽霊みたい。麻生久美子とのシークエンス、「普通に結婚して、子どもは女の子がいい」と言う時のユキヒコはちょっとだけ人間らしくて、何とも切実で哀しい。
女性が恋に落ちる(というより飲み込まれる感じ?)瞬間て、どうしてこうこんなに甘美なんだろう。皆さんルックスが良いのはそりゃそうなんだけど、そーいうことじゃない(ロメール「恋の秋」で恋愛に現を抜かす中年のような)可愛らしさとか熱量、高揚感が詰まってる。そしてその恋を手放す瞬間も。恋愛が齎す全てがキラキラ。ああ。まぶしいよ。
風、楽隊、坂道におにぎり。冗長演出は好みが分かれるかな。でも奔放な本田翼が由緒正しきお嬢様ぽかったり、女子たちの喪服姿だったり、阿川さんにジャック&ベティに喫茶店ウェイトレスのオフビート感だったり、ほんっと井口センセイ的確!よくわかってらっしゃる!!
しかしユキヒコに本妻や本命彼女がいなくて良かった。いたら「黒い十人の女」みたいなことになっちゃう。そんなことすら全部わかってたであろう哀れな性分こそが、「ニシノユキヒコ」その人なのでしょう。
(追記:ニシノさんは帰宅するとちゃんと施錠するのが良い。映画の世界だと「都会で一人暮らし」設定なのにみんな施錠しないの、いつも気になる。超どーでもいいことですが。いや、案外どーでもよくないかも。)
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