まりりんクイン

フォックスキャッチャーのまりりんクインのレビュー・感想・評価

フォックスキャッチャー(2014年製作の映画)
3.8
物凄く抑制された世界のなかでゆっくりと人が狂っていく様が描かれています。
とても多面的で、「身内を超えたい」「初めて出来た友情」「自分の力を示したい」といったテーマが、主に
デュポンとマーク
デュポンとデイブ
デュポンと母
マークとデイブ
この四組の間で展開され、それらが重曹的に絡みあっていきます。

マークとデイブとデュポンのブロマンス的な歪んだ三角関係と捉えることも出来るかもしれません。
デュポンは始めから心に欠陥があり、この事件をきっかけにダムが決壊してしまったのかもしれません。
キツネを追わせるイヌとその飼い主、という図式はときを経て、馬とブリーダー、レスラーとコーチ、と変わって行きますがその本質は何なのか?
「自分は手を汚すことなく楽しめる金持ちのおもちゃ」というだけなのか?
デュポンは本当にアマレスが好きでコーチを始めたのか?

しかし、登場人物達の行動の真意や、本当の所何を考えているのかなどは観客に委ねる作りになっており、その辺りのバランスは同じく実話ベースのデヴィットフィンチャー監督「ソーシャルネットワーク」を思い起こしました。
これほどまでに抑制された演出の中で、わずかなニュアンスを表現するメインキャスト三人の演技力が成せる技だと感じました。

三人の運命が決定的に変わってしまったラスト、マークがリングに向かっていく所で「時代は変わる」のピアノアレンジが流れるのが印象的でした。
まりりんクイン

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