つめけん

クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃんのつめけんのレビュー・感想・評価

3.9
「とーちゃんもロボとーちゃんも、どっちもオラの大好きなとーちゃんだ!」

辛い映画。反則技を使って泣かせに来る。
感動して泣くとかじゃなくて、辛くて泣く。何回も見てるけど毎回腕相撲決着後のシーンで我慢できずに泣いてしまう。僕が創作でボロボロ泣くなんて「トイストーリー3」と今作くらいのもんよ?

ロボとーちゃんは見た目がロボットなこと以外は完全に野原ひろし。つまり、事実上もう1人の野原ひろしなわけであって、彼との離別は実質的にひろしとの離別になる。つまりこの映画が扱っているのは「野原ひろしの死」で、それはもうこの手のアニメでやるのは反則だと思う。

勝手に作り出され、存在を肯定されずに死んでいくロボとーちゃんの気持ちを考えると悲しすぎる。しかし、だからこそ、しんのすけの「負けるなロボとーちゃん!負けるなとーちゃん!どっちも勝て!」が効いてくる。なんていい息子なんだ。
そしてそれがあって、さらにその後のロボとーちゃんの「お前はいい子だ でっかくなれよ」という、父親なら誰もが子供に対して思うありふれた希望を最後にぽつり呟く場面が効きすぎる。こんな悲しいことあります?
本当に、しんのすけがいてくれて良かった。しんのすけの態度が、死にゆくロボとーちゃんにとって最高の救いだっただろう。…辛すぎねぇ?

みさえの態度がリアル。ロボットになった夫を受け入れることはできないけど、そのロボットが滅びゆく様を見るのは耐えられずに泣き崩れてしまう、色々受け入れる子供と違って大人ならこうなるんだろうなという描かれ方に終始している。

黒幕の黒岩の悲しみと主義主張も捨ておけない。父親とは悲しい生き物である。

初見時は何故かエンドロールで嗚咽するほど泣いた。きゃりーぱみゅぱみゅの主題歌がやんわり寂しい感じを醸しつつ暗すぎもせずふざけすぎてもなく、丁度良い。


ただ、終盤のコロッケがスベってるだけのシーンが本当に…何と言うか…。クレヨンしんちゃんの映画でしんちゃんのギャグがスベるのはいいよ、なんでクレヨンしんちゃんの映画でコロッケが自分の芸でスベってんだって話。演出のおかげでアバンギャルドなシーンになってるけど、やってること自体はまあスベってる。


この作品、漫画版もかなり面白い。全体的にカラッとした雰囲気で、情緒的な映画版とは結構違う話になってて、最後のバトルもコロッケカットで普通に熱い勝負になってる。ロボとーちゃんの最期も湿っぽさより熱さが前面に出た描写がされてたりとか、色々ナイスなポイントがあるので、このレビューをここまで読んでくれたあなた!是非ご一読ください…!


「これが大人の階段?」
「H2O…!」
つめけん

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