サマセット7

X-MEN:フューチャー&パストのサマセット7のレビュー・感想・評価

X-MEN:フューチャー&パスト(2014年製作の映画)
4.0
X-MENシリーズ5作品目。
監督は「ユージュアルサスペクツ」「X-MEN」のブライアン・シンガー。
主演は「レミゼラブル」「グレイテストショーマン」のヒュー・ジャックマン。

[あらすじ]
未来にて、ミュータントの殲滅を目的とし、相手の能力に応じて変化する兵器センチネルによって、ミュータントを含む人類は滅亡の危機にあった。
ミュータントのリーダー、プロフェッサーXことチャールズ(パトリック・スチュワート)とマグニートーことエリック(イアン・マッケラン)は、危機を回避するため、人の精神を過去に送るミュータント、キティ(エリオット・ペイジ)の力で、過去を改変することを計画する。
改変すべき目標は1973年。
センチネルの開発提唱者であるトラスク博士(ピーター・ディンクレイジ)を、変身能力をもつミュータント、ミスティーク(ジェニファー・ローレンス)が暗殺し、その結果、彼女が政府に捕獲された事件である。
センチネルの能力の秘密は、ミスティークのDNAにあったのだ。
何十年も前の過去に意識を飛ばす重要な役目は、不老不死の能力を持つあの男に託された。
ウルヴァリンことローガン(ジャックマン)は、1973年に飛び、若き日のチャールズ(ジェイムズ・マカヴォイ)とエリック(マイケル・ファスベンダー)の協力を得て、未来を変えることができるのか…。

[情報]
マーベルコミックの看板シリーズ、超能力をもつミュータントたちの群像劇、X-MENの映画化シリーズ第五弾。
ウルヴァリン単独主演のスピンオフ作品も含めると、7本目となる。

ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンを主役に据えてスタートしたシリーズは、3作目の「X-MENファイナルデシジョン」でいったん区切りを迎え、4作目「X-MENファーストジェネレーション」で、キャストを一新して、1作目のキャラクターの若き日を描く前日譚という形で仕切り直された。

今作は、未来パートでは3作目「ファイナルデシジョン」に続く未来を描き、過去パートでは4作目「ファーストジェネレーション」の続編になる、という、非常に凝った構成を持つ。
過去シリーズのキャストが結集しており、この時点のシリーズ総決算的な作品である。

監督には、X-MEN、X-MEN2でシリーズを軌道に乗せた、ブライアン・シンガーが再登板している。

今作は、シリーズの中でも批評家、一般層共に高い評価を得た作品である。
興行的にも成功しており、二億ドルの予算で製作され、7億4千万ドルを超える興収を叩き出した。

[見どころ]
過去シリーズ総決算!!
パトリック・スチュワートも、ジェイムズ・マカヴォイも、マイケル・ファスベンダーも、イアン・マッケランも、ヒュー・ジャックマンも、みんな出て来る!!
ファーストジェネレーションに続くドラマ再び!!
シリーズファンならいくらでも見たい、若き日のチャールズ、エリック、レイヴンの三角関係!!
彼らを導くのが、未来から来たウルヴァリン、というのは、エモい!!!
みんな大好き、ド派手な超能力バトル!!
今回も、ミスティークが、マグニートーが、クイックシルバーが、やってくれます!!!
X-MENシリーズに通底するテーマ性も健在。
なんと言っても、過去と未来が交錯するストーリーを見事に交通整理した脚本に拍手!!

[感想]
純粋にエンタメとして、とても面白い!!!

思い切って未来パートの人間描写に尺を使わず、バトルだけにして、過去パートのドラマに集中したのは、英断だったと思う。

個人的に、このシリーズに求めているのは、超能力アクションの面白い映像とバリエーション、マグニートーとミスティークの能力を駆使した活躍、このシリーズならではの人間ドラマ、の3点である。

超能力のバリエーション、という意味で、未来パートのバトルの充実には満足した。
空間転移、炎に氷、パワーの吸収などなど、色々楽しめる。
また、過去パートのクイックシルバーの超高速移動のイキった活躍ぶりには、ニヤリとさせられる。
彼が活躍するのはエリックの脱獄絡みのワンパートのみだが、一番印象的なパートだったように思う。

マグニートーとミスティークの活躍も、たっぷり見られる。
マグニートーの圧倒的な魔王感と、ミスティークの変身によるトリックがないと、このシリーズを見た気にならない。

私が求めるシリーズならではの人間ドラマとは、例えばマイノリティの葛藤などだが、特にファーストジェネレーションと今作に限れば、チャールズ、エリック、レイヴンの三者の関係性のドラマ
に尽きる。

ファーストジェネレーションは、チャールズの妹的立場だったレイヴンが、自己の解放を促すエリックに惹かれて、最終的にチャールズと袂を分かつ話であった。
同時に、ミュータントの幸福を思う気持ちを同じくするチャールズとエリックが絆を築き、そして方法論に関する思想の違いから、道を違える話であった。
全体としては、平和主義で穏健派のチャールズに対して、果断で原理主義的なエリックの方が一貫した姿勢を見せて、魅力的だったことは否めない。
でないと、レイヴンがついて行こうという気にならない。
もちろん、演じるマイケル・ファスベンダーの魅力も大きかった。

これに対して、今作では、エリックは、非情で冷酷なテロリストの本性を全開にする。
他方で、前作を経てどん底の状態にあるチャールズが、ウルヴァリンのアプローチを経て、どのように変化し、レイヴンに待ったをかけられるのか、という点が、最大の見どころになる。

チャールズが目を覚ます過程は段階的に、丁寧に描かれ、最終的に、非常にエモい展開に至る。
そう、今作は、チャールズの覚醒のドラマだ。

ラストの満足感は、シリーズ屈指。
ここで終わってもよかったと思うのだが、まだ続くことは、ポストエンドロールからして明示している。

気になる点があるとすれば、タイムトラベル周りのSF設定の謎と、あとは過去シリーズとの整合性だろうか。
最もエモいあのシーンは、どういう理屈だ?等。
ツッコミだすとキリがないので、気にせず楽しむのが吉だろう。

[テーマ考]
シリーズに通底するテーマは、被差別者が社会とどう向き合うか、であろう。
チャールズとエリック、2人の対照的なアプローチが、そのまま問いかけになっている。
今作からは、暴力や攻撃によるアプローチは、憎しみの連鎖を生むだけで、物事を前に進めない、というメッセージが読み取れる。

他方、絶望的に困難な現実に対応する上で、最も重要なこととは何か、も今作では示される。
これが明らかになるシーンはとても感動的なので、是非自分の目でご覧いただきたい。

[まとめ]
旧シリーズとファーストジェネレーションを、見事にリンクさせ、かつシリーズの魅力をも備えた、人気アメコミシリーズの秀作。
個人的には、マグニートー/エリックがよりカッコよかった、という意味で、ファーストジェネレーションの方が好みかなあ。
さて、残るは本編2作と、評価の高い「ローガン」か。
シリーズがどうなったか、楽しみにしたい。