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STAND BY ME ドラえもんのhilockのレビュー・感想・評価

STAND BY ME ドラえもん(2014年製作の映画)
4.0
ドラえもんの原作の中で、感動する作品を3Dで制作、更に初期ドラえもん以来なかった夏公開した作品。原作は第1話にあたる「未来の国からはるばると」、「さようならドラえもん」、「雪山のロマンス」「のび太の結婚前夜」のストーリーを再構築している。内容的には申し分なく、言うなればこれ見て、『ドラ泣き』しない奴は鬼・悪魔扱いでも過言ではない作風に仕上がっている。
私はここ数本の水田わさび版の視聴しかしていないが、大山版に慣れ親しんだものが、本作を初視聴したら幾分の嫌悪感は残る。それはキャストの声が違うからということなのだが、それは大山版に敬意を示しているということであるから、そのような意見も分からないではない。しかし、キャスト総入れ替えの英断をした大山版の関係者に私はあえて賞賛の言葉を送りたい。
日テレ版での失敗もあり、テレ朝版はまさに四面楚歌であったことを考えると、当時のベテランが総結集した布陣であったと今でも思っている。そのアニメの牽引を二十年以上してきた彼らに、別れをつき出すのは厳しい。その辛苦の選択をキャストから提言させたことも立派である。
数ある伝統アニメの声優変遷を考えても、そっくり変えたのはこのドラえもんだけである。交代劇で、声優一人が変わる
のはよくある、それらの批判を声優1人が背負う。いやチームが互いに励まし合い、庇うてくれるというのもあろう。観客の見解としては『亡くなったんだから我慢しないと。』や、『似ているからまぁーいいか。本当は違うけど』という理想とは違う別アニメとして妥協しているところもある。そらならばキャストがまるっと卒業し、全てが変わったという印象で取り入れてもらうほうがいいと、決断したのもまた、生み育てたものの苦しみであったに違いない。
あと一つは、加齢による声の質の担保が厳しくなることである。亡くなった名優たちの晩年の声はなんとももの悲しい。過去の名声優の晩年の声を知っているからそのようなコメントが言えるのかも知れないが、声のみで追いかけられるこの吹き替えという世界はとてつもなく厳しいのである。大山版の声優たちも鍛えていても歳には勝てない。いや、体力を使う声優であるからこそ、クオリティに到達し得ないアフレコという日もあり、自己のプライドがそうさせたということもありえる。
まぁ~昨今の所々を淡々と述べたが、感想としては、4話をうまくつないだ感じになっており、飽きることなく見られるのは素晴らしい。TVアニメでも何度となく流れた内容であるため、作品自体の真新しさはない。というか、版権など厳しさも伴ったわけで、山崎貢のいつもの秀逸な演出はなかった(出せなかった)ようにも感じる。しかし、あえて3Dで描き、タケコプターの空中浮遊など、ドラえもんワールドに溶け込めるようにした演出は彼の持ち味でもある。声優ゲストで、のび太の青年期に妻夫木聡、ジャイ子に活弁師、山崎バニラが出演。水田版では。この初期プロットの映像はやっていなかった訳で、これだけでも、10周年のご褒美感はあったのではと考えます。
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