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GODZILLA ゴジラのbackpackerのレビュー・感想・評価

GODZILLA ゴジラ(2014年製作の映画)
3.0
◾︎ ゴジラシリーズ番外編
◾︎モンスターバース第1作

【作品情報】
公開日   :2014年7月25日(日本)
作品時間  :123分
監督    :ギャレス・エドワーズ
脚本    :マックス・ボレンスタイン、フランク・ダラボン(ノンクレ)
製作    :トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、メアリー・ペアレント、ブライアン・ロジャーズ
製作総指揮 :パトリシア・ウィッチャー、アレックス・ガルシア
エグゼクティブプロデューサー:坂野義光、奥平謙二
音楽    :アレクサンドル・デスプラ
出演    :アーロン・テイラー=ジョンソン、渡辺謙、エリザベス・オルセン、ジュリエット・ビノシュ、サリー・ホーキンス、デヴィッド・ストラザーン、ブライアン・クランストン、ほか

【作品概要】
監督は、低予算かつゲリラ撮影で優れたSF映画(『モンスターズ/地球外生命体』)を監督した、スター・ウォーズオタクのギャレス・エドワーズ。
(ゴジラ好きとして知られる人物が監督に就任しているだけのことはあり、"怪獣を映す"という事をよく理解している。)

核の脅威に対する風刺を、敗戦国としての日本の立場から描いた原点たる『ゴジラ(1954年)』(以下、初代ゴジラとする)と同様のアプローチの作品とはせず、自然が生み出した脅威としての新しいゴジラ像及び怪獣を描いた。
その点こそ、評価を二分する決定的な要員でもある。

なお、エグゼクティブ・プロデューサーに『ゴジラ対ヘドラ』監督にして、「ゴジラに空を飛ばせた」事で田中友幸プロデューサーを激怒させた坂野義光氏の名前があるのは、板野氏がゴジラの新作構想を持っており、ゴジラを3DCGモデリングで映像化する権利を所有していたため、ハリウッドでCGゴジラを製作するうえで金銭的契約の必要があったことによる。


【作品感想】
「マグロ食ってる奴」と比べ、遥かに回数見ている本作。
改めて見ても、大スケールが生み出す迫力といい、着ぐるみゴジラやミニチュア特撮では表現できなかった破壊描写等のアレコレを「や、やったぁー!」とばかりに見せつけてくれます。

主人公サイドのドラマは正直お粗末と言いますか、間抜けな作戦が空回りする、バカばかりのワンダーランドになっていたりしますが、気にしません。
だって、ゴジラとムートーのバトルで、サンフランシスコの街が徹底的に破壊され灰燼に帰す様が見られるんだもの!
いいぞやれやれぶち壊せ!とまあ、大喝采ものです。

初代ゴジラが大好きな身としては、"核"に対するアプローチが、いかにもハリウッド映画のアメリカ臭い姿勢に落とし込まれていたのは、かなり微妙……というか嫌いな点です。
もっとも、先祖の呪縛とでも言いましょうか、積み重ねられた歴史のある作品を、新たな視点で描くとなれば、過去に囚われない切り口でいくしかない、ということはわかっております。
(わかっているのと、好き嫌いはまったく別なので、核及び放射能に対する舐めた態度はやはり度し難いです。)


【ゴジラシリーズ所感等駄文⑦】
ここからは完全に余談ですが、以前初代ゴジラのレビューにも記した、〈渡辺謙の役名間違ってね?問題〉に再度言及しておきたいと思います。

本作で渡辺謙が演じるのは、芹沢猪四郎博士という、モナークで怪獣の研究をしている学者先生です。
芹沢とは、初代ゴジラにて、最終的にゴジラを葬り去る最強兵器"オキシジェン・デストロイヤー"を開発し、ゴジラと東京湾で心中した失恋科学者・芹沢博士のことです。
(『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でのオキシジェン・デストロイヤーの扱いの酷さについては、当該レビューに譲ります。)

猪四郎は、初代ゴジラ及びゴジラシリーズ並びに多くの東宝特撮映画を監督した、巨匠・本多猪四郎のこと。

こうしてみると、なかなか良いネーミングです。
……でも待ってください。一つ、おかしな点がありますよね。
…………そうです、なぜ芹沢なんだ??問題です。


本作の芹沢猪四郎博士は、ゴリゴリの「ゴジラ殺すな」論者です。
次作では「さらば友よ」とまで言ってしまいますから、もう完全にゴジラを愛しちゃってる人です。

あれ?明らかにおかしいですよね?

初代ゴジラにおける芹沢博士は、ゴジラには欠片も興味ない引きこもりです。
「ゴジラ?興味ないなぁ。それより、僕の発明した超兵器、見ない?ワクワク」という、現代的価値観では、かなり怪しい……と言うか危ない人です。
デカい家に引きこもって日夜大量虐殺の手段を研究してるなんて、控えめに言ってテロリスト予備軍です(彼を歪ませたのは戦争です。やはり戦争は最悪です)。

そんな博士は、ゴジラが東京を焼き払った後でも、ラジオの向こうの世界と言わんばかりの無関心。
そこに元婚約者が男とやってきて、兵器を使わせてくれ!と泣きを入れてくる。
さらには、二人が仲睦まじくする姿を見せつけるという追い討ちまで。

この時、芹沢博士は何を思ったか?
「死のう!」ですよ!
「ああ〜っ!?お、俺が結婚するはずだった、昔から知ってる女が、男といちゃついてやがるぅ〜っ!!?」
「もとよりこの世に未練は無い。この世界は俺みたいな奴が生きてちゃいけない世界になっちまった!こうなったら、戦争の亡霊(ゴジラ)諸共に死んでしまおう」ですよ!!

結局最後は、戦争を振り切って生きていける新しい世代の若者達に対し、「幸福に暮らせよ〜」と言い残して、古い時代の人間として死んでいく、そんな人なんです。


おかしい、絶対「ゴジラは神だ」なんて事言うキャラじゃない。
芹沢博士というよりも、むしろ山根博士の方がマッチしていますね。
山根博士とは、初代ゴジラにおいて「いやいや、ゴジラは貴重な存在だ、殺すなんていかん!」という主張のおじさんです。
ゴジラを殺さなきゃっ!なんてぶち上げる宝田明に、「帰ってくれたまえ!」とキレるおじさんなのです。

まあ、名前は芹沢博士&本多猪四郎から拝借し、人物面は山根博士から拝借した、ということだと認識しておきましょう。
そうでないと、芹沢博士がゴジLOVEガチ勢とい頭が痛くなるような話になってしまいますからね。
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