近藤啓二

ルパン三世の近藤啓二のネタバレレビュー・内容・結末

ルパン三世(2014年製作の映画)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

ルパンがずうっっっっっと出てこない。

ラストになって、4人が横一列に並んだ絵面観て、…まあ、ルパンがやりたかったと言われたら、そう見えなくもないな。
テレビのコントレベルで。

まず、これはメインの4人には可哀想だと思う。

キムタクの古代守もそうだったけど、小栗旬は小栗旬。
次元役の彼も、綾野剛も本人以上の何かにはなっていなかった。
コントなら、途中で素に戻って自嘲する逃げ場も笑いになるけど、ルパンっぽい衣装を着せられた小栗旬が延々とルパンっぽいことをやらされて、それがこうして映像として残るというのは、拷問でなくなんだというのか。
どこからどう見てもアジア人顔の俳優が、ルパンルパンと呼ばれて。
もうイベサーのいじめじゃないですか。

黒木メイサに至っては、将来シワシワおばさんになるだろうなと予想がつくくらいのガリガリっぷり。
好みがあるだろうが痩せすぎが顔に出て痛々しい。
峰不二子ってフェミニンかつグラマラスな、叶姉妹みたいなもんじゃないのか。つうか、叶姉妹や峰不二子は世の男性から見た悪女、魔性、ファムファタール、そういったイメージの具現化だろ。
パリコレのモデル体型がそうじゃないくらいわからんのかな。
というか、わかってても芸能事務所縛りでキャスティングするからこういうことになる。
いい加減、首絞め合うのやめてほしい。


予想はされていたけれど、全くルパンの映画ではなかった。
ルパン一家誕生の前日譚みたいな描き方をしてシリーズ化を考えてたんだろうが、こうもポイントを外しまくったキャラ造詣をしてしまったのでは、名作の看板を借りたいつもの原作レイプと言われても仕方ない。

新しいドラえもんを作ると言って、4次元ポケットをなくすだろうか。
キャラもたってない登場人物を増やした挙句、オリジナルストーリーとして突き抜ければまだしも、結局あのイケメンアジア俳優たちは何だったのか、丸っこいおばさんハッカーは何が魅力だったのか、中途半端でさっぱりだった。

仮に前日譚として、謎の泥棒貴族っぽい集団の一味だったという設定はどうだろうか。
ルパン三世と言うキャラクターは、三枚目でもあるがそもそも孤高の一匹狼な天才であり、魔術師という性格付けがなされていた。
その出自はアルセーヌ・ルパンの孫という背景があるだけで、あまり多く語られていないからこその魅力だった。

カリオストロの城では次元と出会う前のルパンがごく短く、かつそれが本筋のカリオストロ公爵との因縁につながっていると言う実に見事な語られ方がされていた。
カリオストロの城から引用すべきはそういった演出であって、ルパン参上のイラストや、バネで飛び出すびっくりじかけ、みたいなそんな小手先だけ摘んでどうする。


おまけにこのルパン、殴る殴る。
ルパン三世は悪党も殺すが義賊であり、盗みには美学がある。
それがなぜボコスカ殴って正面突破しにゃならんのだ。

北村龍平は言うなればもつ焼き屋の親父で、ホルモンの焼き加減と仕入れのことしか頭にないんだよ。
そんな親父にフレンチや、懐石料理作らせるなよ。
北村作品はバイオレンスなんだよ。
暴力性とエキセントリック。
それしかないの。
もつ焼き屋でも白モツと酎ハイしか出さない、変なお店なの。
だからゾンビとか作らせたら上手いんだよ。

彼のそういうとこは、ジャンルと上手く絡むと生かされるものもある。
ゴジラはまだ人間じゃなかった分、そのバイオレンス性も昇華されて歪ながら妙な魅力はあった。
でもルパン三世のアクションはバイオレンスじゃなく、ハードボイルドアクションで、ダンディズムだろ。
めちゃくちゃ人間くさいもんだろ。
洗練された描き方がないといかんでしょ。
もつ焼き屋に出番があるか?


今回のルパンで言えば、彼の流儀もカーチェイス始め、その他のアクションシークエンスが、目に煩いだけで効果的とも思えないカメラワークとカット、なんかそれっぽいだけの編集で構成されていて、見事な空回りぶりだった。
もう下手くそなマイケル・ベイという感じで観ていられなかった。
これは明らかにルパンコンテンツのリズム、アクション俳優ではない芸能事務所俳優、それらに北村流が上滑りした感じだ。
しかも、ジョン・ウィックやら、REBORNとか出た今となっては、ヴァーサスでキレッキレだった北村流のアクションが色あせてきた気がする。
ヴァーサスがキレてたのは、役者陣が動けるメンツだったのもあるし。

正直、北村龍平という才能はある意味、稀有なところもあって、故にハリウッドで頑張れる人だと尊敬はしている。
ただこの映画ではちょっと残念だった。

脚本もどうだろう。
日本のアニメ、漫画の実写化だからって、アニメカット出さないといけないもんですかね。
あの、宮崎タッチを意識して回避しながら、でも微妙に似てるっぽさをチラつかせた中途半端なアニメキャラは何ですかね。
どうみて欲しいんだろ。
死ぬほど使い古された上に、なんの緊迫感もないレーザー装置のシーンとか。
オーシャンズ12でももうちょい気の利いたことやってたよ。

ハイソっぽい演出はわかるけど、屋敷入ってすぐワイングラス?
なんかビンボー人が背伸びしたゴージャス演出がつきまとう上に、日本のテレビイメージが染み付いた俳優陣、それがまたアジア圏に拡げた世界設定では無理な背伸びに見えて、どれだけスタイリッシュにウインクしようが、勘違いした厨二のショボさしか感じられない。

このモッサい感じはやっぱ、おっさんがおっさんと組んで「漫画なんてもんはな、ブワーッとやってビャーッとやったら勢いが出て丁度ええねん」「そやそや」みたいな昭和の雑さを感じるのですが。

人が生み出した結晶への敬いとかあるようには、ちょっと思えない。
軽く扱ったとも思わないけど。
自分は映画さまになってて、原作への愛情が感じられないってこのことだろうな。
近藤啓二

近藤啓二