生永這人

オール・ユー・ニード・イズ・キルの生永這人のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

「リセット」されたらループして同地点から再スタート。この「設定」は、実は私たちの日常にも似通ったものがあるのではないでしょうか。それは、「ルーチン」と表現している日々でのこと。たとえば仮に、本文を書いている8/7、私がルーチンワークでミスを犯してしまうとします。すると上司から咎められ、意気消沈しますが、やり直したいと思う、願わくば「リセット」したいと。
そして8/7のミス直前に戻る…記憶は保持されているから「繰り返し」なんてしない。もちろんその場は認めてもらえるわけです。ところが、後日ふたたび別の件で…と。ああ、「リセット」したい。8/7の時点へ戻り、ひとつめのミスを回避し、ふたつめも回避する。しかし…と、このように先に進もうとも、別のミスが。これってかなり遠回りですよね(『バタフライ・エフェクト』の、こんなはずではなかった感が想起されます)。

つまり、いずれは「リセット」しても、どうにもならない終点が必ずあって、本作ではトム・クルーズ扮する主人公がパワーを失ってしまった場面が示唆するように、ここにこそ最大のメッセージがあったのだと私は思うのです。
(死んでしまっては元も子もないので「遠回り」だろ、とは言えたものではありませんが、)

ただ、けっきょくのところ、「失敗を積み重ねて、それを経験値として糧にして、新たな選択を恐れぬ、強い意志ある人間たれ!睡眠状態=仮死、で貴方たちは「リセット」してるんだ。やり直せるんだ。8/7が8/8になっても、終点までは経験積んで進み続けろ!」みたいな説教が聴こえてきました。
確かにあそこまで大スケールで描いてくれなきゃ、そうだよなぁ、うん、とは感じなかったかも分かりません。

それでも、腑に落ちないことがあり、以下列挙するに、
・エネミーらの「最終防衛ライン」やわ過ぎだろう、とか。
・「設定」は面白いけれど、あのマッドな「装置」さえ、彼女の覚醒時にぶっ刺せば「元凶」を攻撃できたのではないかな、とか。
・だって例の「幻想」だってあの「装置」さえあれば見えたのでしょう?まあ予知能力を将軍に見せなければ、入手できなかったのでしょうけれども(いや、彼女だって過去に機会があったはずだ)。
・あとは「アルファ」がキルされれば「リセット」される、それが人類を翻弄する、すなわち「わかったぞ!読めるぞ、これで勝てる!」と思い込ませるのが、エネミーの戦略であるという説が事実であれば、エネミー側も当然、戦略を立て直して相手の「経験予測」を逆手にとって攻撃方法を変えてくるのかなと考えていましたが、どうもそういうわけでもなく、「オメガ」の存在がバレてしまえば、それこそ、こちらとあちらの「ループ」になってしまうのではあるまいかと疑問を持ちました。

ひとことで言えば、前半は本当にテンポも良く、素晴らしいSFアクションでした。映像体験としても、『パシフィック・リム』を彷彿とさせるほど(スコア4以上は確実)。
ただ、後半はどうだったのでしょう。エネミーの正体こそ、はっきり映さなくて良かったのでは?あれじゃ『宇宙戦争』じゃないか。ハリウッドさ炸裂の印象を強く受けました。もうね、主人公さえ突っ切って、後は死んで、爆発して、そうゆうのばっかりではないですかハリウッド。とくに彼主演のって。約束された結末というか。今作は始めこそ絶望しかなくて(うろたえているトム・クルーズに)期待してしまったのに。今までの展開はトム・クルーズのためにあったのかしら?(楽しむために映画館へ出向いたのに…どうしてこんなこと考えてしまったのだろう)

だから、主人公の成長ストーリー、そしてその結果としての完全勝利、これを見ていたかったというのが本音です。
生永這人

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