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海女の化物屋敷のhorahukiのレビュー・感想・評価

海女の化物屋敷(1959年製作の映画)
3.4
なにこのクソダサジャケ…

屋敷に隠された「秘密」が惨劇を生む怪談風味のミステリ。正統派な怪談としてスタートしつつも、徐々にミステリとして展開を始め、また怪談へと戻ってくるという面白い作品でした。

『家に幽霊が出る…』という連絡を親友の青山ユミから貰った主人公キョウコ。ユミは大きな屋敷で数人の使用人を雇い暮らしてる地元の名主一族の唯一の生き残り。親や兄姉はここ数年で亡くなったり行方不明になったりで、若いながらも跡取りとして漁場を管理している。その屋敷に幽霊が出て自分を殺そうとしているというのだ。屋敷にやってきたキョウコがその真相を探っていくうちに、屋敷にまつわる黒い思惑が見えてきて…。

冒頭から屋敷の異様さを強烈に印象づける。ユミからの手紙を受け取って屋敷にやってくる主人公。現地に到着した主人公が屋敷に入るまでに様々な負のイメージをばら撒き、異界へと足を踏み入れつつあることを実感として際立たせている。

そして広い庭を抜け入り口までやってきたところで、ドアが開かれるまでにたっぷりと時間を割くことで、「ドアが開かれたら二度と戻ることができない」という彼方と此方の境界線を踏み越える行為をドアの開閉という他人主導の行為として設定し、覚悟も心の準備もできていない状態で彼方側へと踏み込んでしまうという不安な心境が嫌な予感を増長させている。

恐怖演出は正直それほどうまいとは思わなかったのですが、暗闇+無音の状態でじっくりと空気感を高めていく演出は手堅いなと思いました。異変を感じライトを手に屋敷の中を行く道のり。階段を降りるという行為を印象的に挟み込み、辿り着く先で空気感を一変させる安堵と転落の落差。めちゃくちゃわざとらしくてあざといんだけど、この時代だからこその説得力と良いもん見たなっていう満足感があって邦画の恐怖演出は好きだな〜って再認識しました。

内容的には横溝正史的なお話なのですが、ミステリとしての展開をしつつも、クライマックスの「モリ」のシーンで、やはりこれは怪談だったのだなと思わされる。

先代から引き継いだ漁場の経営という重荷や、ちょっとの隙につけ入ろうとしてくるズル賢い輩等々、立ち向かって行かなければならない現実を死後の世界が前を向くよう後押しする。そしてそれにより現実からの祝福までもがなされるという温かさが良かった。

めちゃくちゃ面白いってわけじゃなかったけど、なかなか楽しめました。というかちょっと前までジャケ画像もうちょいマシなやつだったような気がしたんだけど、何で変えたんだろ…。
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