Masato

ダンシング・クィーンのMasatoのレビュー・感想・評価

ダンシング・クィーン(2012年製作の映画)
4.2

ファン・ジョンミンとオム・ジョンファが何故かそのままの名前の役で出演しているコメディ。

タイトルとジャケットで社交ダンスがテーマの映画かと勝手に勘違いしていた。幼馴染のまま結婚をした冴えない弁護士とエアロビ講師。ふとした出来事で成り上がってしまうファン・ジョンミンと夫に隠してかつて夢見た歌手を目指すオム・ジョンファの再起映画。

最初からおちんちんとかマジでくだらなすぎるお笑いばかりで呆れながら(褒め言葉)見ていたけど、そんなところから韓国の社会問題、政治情勢、家父長制に切り込んでいく物語に意表を突かれて笑いと感動の涙。本当に凄い。

俺はアホなファン・ジョンミンがめっちゃ好きなんだなと確信した。能天気で芋臭くていちいち笑わせ方がIQ低い。好きなタイプではないけど、ファン・ジョンミンがやるとマジで愛すべきキャラ。対するオム・ジョンファも心に苦悩を抱えてるけどアホな友達にそそのかされてアホしてて面白い。

そんな弁護士のファン・ジョンミンが政界に巻き込まれてから変わっていく。韓国の汚職に塗れた世界、少子高齢化問題への対策に対して、子育てもしていないベテラン政治家が的はずれな事を言っているなかで、庶民感覚をベースに政治参画を促して考えを打ち出していく。彼の言っている政界と社会の問題が今の日本でも全く同じで急にグワッときた。

そして韓国に根付いている家父長制を政治のあり方と重ね合わせながら、さらに結婚をして夢を犠牲にしてきた女性にも向けて男性だけが夢を追いやすい特権的な社会になってしまったおかしさと謝罪も含めて素晴らしい言葉を投げかけるクライマックスシーンは素直にすげぇと口にしてしまった。すごい物語考えたなあと。政治家ってのが圧倒的な男性率を日本でも誇っているわけで、「嫁を管理もできない政治家」という言葉のリアルがある上手さ。

韓国で誰もがどんな年齢になっても夢を持てる!目指せる!というメッセージを掲げるならば、女性を犠牲にしてきた家父長文化という壁にぶち当たるわけで、そこを無視せずちゃんと描いた作り手が素晴らしすぎる。

民主化デモのシーンがサニーに似ていた。まさかの細身のマブリーがカメオ。
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