いしんじ

チョコレートドーナツのいしんじのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
3.9
逆にこれでハッピーエンドにされてたら、なんかムズムズしてたかも。

いろんな物を捨てて、犠牲にして、未来の選択肢を狭めていく。「何かを得るために何かを捨てる」のだとしても、「邪魔になるから」という理由で捨てるとほんとよくない。「不必要なもの」と「邪魔なもの」ってちょっと違う。
とはいえじゃぁ、そうしなかったらええんかっていうのもまた違う話で、「そうせざるを得ない」という状況があったことも事実。常に理想論で物事は進まない。

そんでまたムズムズの話に戻ってくるんですが、仮にこれで「色んなものを捨て闘いそして辛さを乗り越え勝ち取れたものがあった」という美談になられたらやっぱなんかうーーーんってなるじゃないですか。(完全主観)

やっぱここで逆に、「色んなものを捨てるしかなかった。得るために犠牲になるものが多かった。それだけ多くのものを切り離してきたのにそれでも…」の方がやっぱずっしりと重みを持ってクるじゃないですか。強烈な「現実感」を帯びていて、絆や愛ではどうしようもないこともあって、「事実は何も考慮してくれなくただ事実である」という冷徹な感じ。いわば「重力で物が落ちる」みたいな感じ。落ちてほしくなかったとか今のタイミングはやめてよとかを何も考慮してくれないあの感じ。

そのどうしようもなさに脱力するような、安易に美談とかにすんじゃねーぞって思わされるような、その独特なポッカリとした感じ。
いしんじ

いしんじ