MisaSugiyama

チョコレートドーナツのMisaSugiyamaのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
4.1
「これが正義なのか?あんたらが気にも留めない人生だ」

心を揺さぶる作品は決まって、出てくるキャラクター全員の本気で生きている熱が伝わってくる。

すでに性別に縛られて女らしさ男らしさを求めるのは時代遅れだと思っている、令和を生きる私にとっては、裁判で出てくる言葉に激しく嫌悪感を抱いた。「同性愛を隠さない生き方を、マルコが普通だと思う可能性があり…」、こんな判決炎上しそうよね。

偏見と差別から逃れるための嘘、制度からこぼれ落ちる子どもたち。愛情と正義、この世にあるもの全て、普通なんてものはないよなぁ。私たちの知らないところで今日も誰かが取りこぼされている。

悲しいけど、でも伝えるためには必要なシナリオと思っていたけど、事実に基づくシナリオと…。世の中に対して自分のできることなどほとんどないが、差別や偏見はひとりの思い込みから生まれるということを肝に銘じたい。

ルディ・ドナテロを演じるアラン・カミングの慈愛に満ちた表情と美しさを感じる演技が魅力たっぷり。
マルコ役のライザック・レイヴァの全てが愛おしい。マルコと同じダウン症をもつ彼は演技も、踊りも、感じとれる熱がすごい。この作品の出演が決まった時に「自分の人生の夢が叶った」と涙した話を読んで、全てのシーンに涙…。
シリアスなシーンの相槌ひとつでも、驚くほど泣けるのだ。もっと活躍して欲しい。

「私は普通だ」という願望に近い幻想にかかり、普通以外を見ないようにしている人に、ゆっくり見てほしい作品。
MisaSugiyama

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