グリフィスは今作で初めてリリアンとドロシーのギッシュ姉妹を主演に据えた。
「強盗により自宅に監禁された二人の女性が主人公のサスペンス」
という、100年近く後の『パニックルーム』などにも見られる型の作品だ。
前半シーケンスでは兄と妹の仲睦まじい様子、および若者同士の淡い恋が描かれ、同時に敵が暗躍する様子も並行して提示される。
ここまでで観客に事件を予感させつつ、空気を十分に緩和させてから、後半で一気に緊張感をみなぎらせるシナリオとなっている。
いわゆる「最後の瞬間の救出」におけるカットバック応酬が見事で、自動車のスピード感との相乗効果で切迫したムードが際立つ。
さらに「監禁されたヒロイン達からは犯罪者たちの姿が見えない」という状況もヒロインたちの不安感を煽る要素で、これは『見えない恐怖』や『暗くなるまで待って』などの先駆けとも言える。
画面いっぱいに映るピストルがゆっくりと観客の正面、つまり少女たちに向けられる大胆な構図も強い印象を残す。
この時、恐慌をきたした彼女たちの意識は、壁の穴から自分たちを狙う銃口だけに向けられている。
観客をギョッとさせると同時に「恐怖で視野が狭くなった登場人物の精神状態」まで表現されており一石二鳥だ。
グリフィスの完成された編集技術、そして効率的かつ効果的な演出など見どころ満載の小品である。