無知A

フルートベール駅での無知Aのレビュー・感想・評価

フルートベール駅で(2013年製作の映画)
4.0
社会問題の部分も感慨深いが、話の組み立ても光っていた。一つ一つの出来事を大きく見せていこうとはせず、控え目に映していく事で、より現実味があり、感情移入しやすい作品となっていたように思う。これは、ノンフィクション作品にとって、非常に大切なことだ。当事者の内面を単に美化するのではなく、良い部分と悪い部分の両方を映している事に意味があった。

さて、今作は間接的差別を浮き彫りにした作品といった解釈も可能だが、私はもう少しマイルドな部分が論点の中心だと感じた。誰が誰に対して人種差別を行ったといった差別自体ではなく、失われた命に着目し、その平等な重みを説いたものが今作だと私は考える。差別というものは加害者から被害者への一方が成り立てば、もう一方も成り立つので難しいのだが、今作は敢えてこれらが成立しないように作られている。つまり、今作は、差別の有無ではなく、一人の大切な命が理不尽にも奪われてしまった事、この事実から命の重みを示唆したものだと思う。

誹謗中傷などの攻撃ではなく、語りかけによって、再度人々の心へ優しく触れる今作は、真の意味で平和を呼ぶ作品だと私は感じた。


(内訳)
内容 4.1
学び 3.9
構造 4.1
無知A

無知A