April01

フルートベール駅でのApril01のレビュー・感想・評価

フルートベール駅で(2013年製作の映画)
3.8
実際に起きた出来事を、実際の映像で冒頭で見せる。再現映像でないその瞬間のリアルな空気に心臓が凍る。
人々のざわつき、被害者及び仲間たちの発する言葉、その時起きたことそのままを見せるスタートはドキュメンタリーのよう。
何がこの先に起きるかを知りながら、事件の前日からその結果に至るまでの故人、友人、家族の姿を見るのは、再現映像かつ演技とはいえ、冒頭がリアル映像だけに余計につらい。

白人が、警官が、黒人が、銃が、というのが一般的な感想の中心になるのだろうけれど、自分は1人の人間が死に至る前の日常と、突然起きる不幸、という観点がメインとなり、それは本作の主旨と異なるかもしれないけれど、抜け出せない負のスパイラルの一例として、深く心に迫ってくるものを感じる。

当時から時代はより進み、事件が起きるとほぼリアルタイムで映像が目に入ってくるようになる。
人によってはこの速度を批判するようだけれど、言葉で説明されるよりも実際の映像を見た方がより多くの情報を得ることができるし、何かを介在せずに見たものについて考え意見を持つことができる。そういう意味で、本作でいきなり冒頭で核心部分にリアル映像を使う手法は、現代の情報伝達のあり方そのもののようで、事実を基にしたストーリーの一形態として成功している。

敢えて事件の後日談をメインにせず、死後よりは生前を描いたことにより、観る者に考えることを委ね能動的な鑑賞者となることを託している気がする。
April01

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