takaori

フルートベール駅でのtakaoriのレビュー・感想・評価

フルートベール駅で(2013年製作の映画)
3.8
2023年222本目

2009年にアメリカで起こった実際の事件に基づく映画。残念ながら、アメリカ社会や警察組織はこの悲劇に学ぶことはせず、同じような事件が繰り返されていることは周知の通りである。
90分弱と短い映画ながら、その大部分はともすれば「退屈」と感じられるような内容である。これは、警官の暴力によって理不尽に命を奪われたオスカーの、最後の1日をありのままに描こうとする作風による。事件が起こると、人はえてして「命が失われたこと」そのものだけを悲劇ととらえ、そしてニュースを消費し、すぐに忘れてしまいがちである。だが、殺人や暴力がいったい何を理不尽に奪ったのか、を理解するためには、もう少し時間をかけて、その人の生がどのようなものであったのかを知る必要があるのだろう。
本作を見て気になったのは、オスカーが殺される理由は何もなく、警官の悪事に他ならないにもかかわらず、オスカーがかつてヤクの売人であったことや、仕事に怠惰でクビになったことなどをもって、「こんなやつは殺されても仕方ない」という反応をしてしまう人もいるだろうということである。アメリカ人だけでなく、日本人にもこの種の切り捨て方をする人は多い。名古屋入管での外国人殺害事件が不起訴になった件も考えると、この映画が描く権力の暴走と暴力の問題は、日本人にとっても決して他人事ではないと思う。だが、その自覚がある人は多くはなさそうだ。
takaori

takaori