真っ黒こげ太郎

ヒューマン・レースの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

ヒューマン・レース(2013年製作の映画)
4.5
走るか、死ぬか。

「もう本ッ当にもう、パーン☆となりましたね頭が☆」




白い光に包まれて、突然見知らぬ場所へ集められた80人の老若男女。
それと同時に彼らの頭の中に響く謎のメッセージ。

「学校と家と刑務所は安全地帯」
「道から外れたら、命はない」
「2周遅れたら、命はない」
「草を踏んだら、命はない」
「レースを拒めば、死だ」

そして、それらを守らない人は次々と頭が爆破してしまうのだ!!!
次々と脳天が爆発し、恐怖に駆られた人々は訳も分からず走り始める。

自分だけ生き残ろうとする者や、神の思し召しだと唱える者、皆を救おうとする者、自暴自棄になる者、そして狂気に染まってゆく者…。
極限状態に追い込まれた人々のあらゆる思惑が渦巻く死のレースが始まった。




見も知らぬ80人の老若男女が唐突に死のレースに強制参加させられる、デスゲーム系のサバイバル・シチュエーションスリラー。

最近では数多く増えてきた理不尽デスゲーム系映画の新作(「フューリーズ 復讐の女神」とか「ゲーム・オブ・デス」とか)を観たら本作の事を何となく思い出してきたので、久しぶりに再鑑賞。
因みに、競売率の激しい地元のゲオにも未だに長い事置かれています。w



本作は所謂デスゲーム主題のシチュエーションスリラーで、「この先生きのこるのは誰!?」「誰がなぜこんな事を!?」という感じの展開だが、どちらかというとデスゲームの中で生き残ろうとする人々の人間ドラマを軸に描いている感じ。

とは言え、メインとなる人物の背景は必要最小限に留め、そこから極限状態に陥った人間模様やエゴをガッツリ描く。
因みに80人も参加者はいるが、メインとして描かれるのはせいぜい10数人程度、後は画面外で死にまくったりしているがまぁこれはしゃあない。
(もし鈍足な自分だったら、普通に周回遅れで死にそう。w)

身勝手に自分だけ生き残ろうとしたり、皆も助けようとして失敗したり、生き残る為に殺し合いを始めたりと、デスゲーム物の人間模様としてはベタだしありがちっちゃありがちだが、極限状態で壊れたり、外道や裏切りに堕ちたりする外道展開や胸糞展開も丁寧に描かれており、いつ誰が死ぬか分からぬドス黒いドラマは見入る。
重要そうな人物も容赦なく死ぬし、誰が生き残るか分からないという面でも見ごたえがある。


後半は生き残りの数も少なくなってゆく為、必然的にハードなバイオレンスシーンが増えてゆく。
生憎頭が吹っ飛ぶシーンはCGだが、それ抜きにしてもあちこちで流れるドス黒い血にドス黒い展開も相まって血みどろバイオレンス率は中々。


とは言え、基本は同じ廃工場らしきコースを周回してるだけなので絵的には地味な感じが拭えない。
また後半はややレース要素がおざなりになり、生き残ろうとする人間達のドラマが重視になるので、ラストまでガッツリデスゲームをやってるのが見たい人はガッカリすると思う。

そして何といっても、ラストのオチ。
流石にあんなムチャクチャまみれの状況でまともな真相が出るとは思わないが、最後の最後であんな超展開かつ投げっぱなしジャーマンなラストで終わられてもなぁ…。

私的にはしっかり極限状態の人間ドラマを描いて、飽きずに楽しめたのだが、そこら辺が評価が分かれてる所なのだろうか。
まあ俺もラストは「何だそりゃ?」ってなったけど。

後、後半のとあるシーンは光の点滅が連続し、目に悪い映像になっているので注意。



容赦のないハードな内容ながらドラマは見入るし、無駄もほぼなくテンポも良い、低予算でありながらかなり力の入った力作には違いないと思う。

だが、人間関係の描写が話の中心だったり、デスレース物の割に展開が変わり映えしないので全体的に地味だったりするのでかなり人を選ぶ作品には違いない。

実際「人間ドラマが上手い」「無駄をそぎ落として潔い」という好評もあれば「地味」「退屈」「話にノれない」といった酷評もあって、評価がかなり分かれてるのでむやみにオススメできないが、私的には面白かったので興味のある方は見て欲しいです。

…いいもん、自分が楽しめた映画がボロクソに言われるのなんて、もう慣れっこだもん。 畜生!!!(最後の最後で拗ねる)