このレビューはネタバレを含みます
【 TEL・TEL・ボウズ 闇の偶然 】
ショッキングな映像の連発である。
電話(TEL)が、エンドロールに名を連ねてもいいほどに頻繁に登場するキーな存在となっている。もちろんスマホでも携帯電話でもない。97年映画のため、公衆電話が活躍している時代なのだ。
雷魚とは、市場価値がゼロに等しいらしく、誰からも相手にされない魚なのだという。それが本作に登場する闇を抱えたそれぞれの男女と酷似している。魚の死骸が度々映し出されるシーンはショッキングであった。そして酷似している男や女も…。
釣りをするときに、収穫がゼロのときをボウズというらしいが、それが本作に登場する闇を抱えたそれぞれの男女の虚無感と酷似している。フワフワとしているが行きどころがない切羽詰まった様子は闇を抱えていることを理解するには十分であった。
赤いシャワー室が血で染まり、悲劇の場所となるが、それは人のものであるのか雷魚のものであるのかは分からない。あるいは、どちらのものかもしれない。
闇を抱えたもの同士が“たまたま”出逢い、同じ心境ということを知り、一気に意気投合する。出来過ぎと思われがちだが、本作品はリアルで、まんざらではないと思わされる。そういえば本作品は、実際に起こった事件をモチーフにした作品らしい。
作中で髪をカットして見た目を変えるカットや、エンドロールが流れない編集がおもしろかった。