ツバルを観たならばスバルを観ない訳にはいかない…か、どうかは根拠なき観賞。
スバル…すばる…昴…谷村新司…あっ。
ここには地響き轟く爆撃も銃弾の嵐も、子供達の悲鳴も人々の涙も一切無い…。
あるのはユダヤ人とアラブ人の、日常生活の中で暮らす風景があるだけ。
イスラエルの人々にとっては日本車は高嶺の花、ましてや新車となれば20年の歳月をかけて蓄え念願の〝スバル・レガシィ〟を購入した中年男〝ズベイル〟。
妻に先立たれた〝ズベイル〟にとって〝レガシィ〟は、憧れの恋人を手に入れたような慰めと癒しと生きる糧となる。
しかしその幸せも束の間、自動車泥棒によって〝レガシィ〟が盗まれイスラエル各地を巡る車探しの旅がはじまる。
イスラエルの街々はもちろんパレスチナ自治区内へも入り込むが、そこが長年に渡る特異な地であるはずなのに聞こえるのは人々の暮らす日常の音。
確かにこの地域のニュースや映画と言えば、激しい双方の争いが耐えない悲惨な出来事を描くものばかり。
イスラエルとパレスチナのもう1つの顔を描いた事からある視点が生まれ、一方的に入ってくるマスメディアの情報だけで伝わらないことが分かる。
これの映画の風景が現実かどうかは、さほど重要ではない。
人間ドラマを描いた軽いコメディ映画なのだから。
ユダヤ教・イスラム教・キリスト教の聖地〝エルサレム〟は、それぞれ立場は違っていても数千年のココロの遺産が刻まれている。
そう、この特異な地理的条件の中に彼らの聖地が存在するこの地で、〝ズベイル〟は本当の〝レガシィ〟を魂で感じるだろう。
人はどんな厳しい環境でも生きねばならぬ事には変わりない、最後はプレアデス星団に散開する〝スバル〟の星と輝く..★,