このレビューはネタバレを含みます
冬の寒空の下、駐車場の車で夜を過ごす人たちがいます。路上生活者です。中年の坂を越え、初老に達しようとしている几帳面で冒険をしない主人公。特技は時計を直すこと。几帳面で器用なので車も生活するに便利な空間に仕立てています。
同じ駐車場で知り合った路上生活者の青年と世代を超えた友情を育んでいきます。
若者らしい冒険心と一歩踏み出す勇気に惹かれ、淀んで自信のなかった男性は少しずつ変わっていきます。
ただし、青年は薬物中毒でした。男性は青年を諭すのですが。
昼間はダブリンのどんより曇った空と寒風の吹きすさぶ風景に気が滅入るのですが、夜は街の明かりが星のようにきらめき、美しくもあり、温かく恋しい家庭の象徴のようでもありました。
映像には写りませんでしたが、花火が打ち上げられるシーンがあり、冬の花火はひときわ美しく悲しく感じました。
父親との葛藤のあった青年は子供の頃はきっと親の言うことをよく聞く良い男の子だったのではないかと思いました。新聞に名前が出たのは、ピアノで賞をとったからでは、と想像させるシーンがいくつかありました。
止まった時計がいくつか出てきます。初老の男性はそれを直します。
心がその時間で止まってしまっている人たちの心を動かします。
でも、時間は後戻りできない。動くようになったら進むしかないのです。
しんみりしました。いい映画でした。