こんな映画、嫌いになりようがない。「アスペルガー症候群」という大変デリケートかつ複雑なテーマを、軽快なタッチと嫌みのない脚本で紐解いてゆく。「人とはどこか違う人」を描いた作品は過去にも多くあるけれど、ここまでキュートな物語がかつてあったろうか。
全ての事象を定量化しないと不安で仕方ないシモンと、そんな彼に振り回される兄のサム。彼がまた良い男なんだな。この対比が実に見事で、そこには一切の恩着せがましさがなかった。この手の作品はどうしても「健常者」の聖人じみた優しさが鼻についてしまうものだが、サムもしっかり「普通の男子」だった。シモンのアスペルガーに対してしっかりブチ切れるし、しっかり泣く。だから、イェニファーが「天真爛漫」なキャラクターとした映えたわけだ。
福祉がしっかりしていることで有名なスウェーデンだけれど、何となくその理由がわかる素敵な映画だった。これだけポップな作品を社会的な話に結びつけるのは一見乱暴だが、的外れでもないと思う。