Hotさんぴん茶

シンプル・シモンのHotさんぴん茶のネタバレレビュー・内容・結末

シンプル・シモン(2010年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

実際に見たのは2015/3/17。心に残った作品で、当時のメモから思い出して書いている。
【感想概要】
■1.未知の世界を一つ一つ理解していくことの大切さを教えてくれた。
■2.思いやりと自己満足の境目について考えさせられた。
■3.人と人とが歩み寄って変化していけることの尊さを感じた。
【感想詳細】
■1.
シモンは、ちょっとした変化に大きく反応してしまう。それで周りが振り回されることもしばしば。
しかし、シモンに限らずどんな人も環境が大きく変化した時は、不安になることは多い。自分もその1人だ。
この映画のシモンの周りの人たちも、シモンほど大きな反応はないものの様々な環境の変化に戸惑っている。
こんな変化にどう付き合っていけば良いのか。決まった方法もないし、難しい問題のように思える。

ただ、この映画はそのヒントを示してくれる。
それを解決するのには遠回りしてもいいのかもしれない。時には、想像したのと全然違う答えが出るかもしれないけど、と。
これは登場人物達のやり取りを見て、また自己流でマイペースにそれでも確実に前に進んでいくシモンに勇気付けられたことで、受け取れたメッセージだ。

■2.
本来の性格とアスペルガーの境目について考えさせられた。これは他者への思いやりと自己満足の違いにも置き換えることができる。

シモンの場合は、アスペルガーがあり、自分の中のルールに従って生きている。そのため家族からは、何をしても自己中心的に動いていると思われてしまう。

実際、確かに、兄に対するシモンの行動は、兄本人の気持ちを無視していた。彼は弟を愛しているが、振り回されて苦労していることも多い。

劇中のデートのシーンに至ってもそうだ。このシーンにはいろいろ考えさせられてしまって、素敵な企画だけど、どこか現実の状況とズレてしまっているところが切ない。またデートの席での、兄とイェニフアーの会話が印象的だった。

兄はシモンに対して(シモンはアスペルガーだから※)自己満足に過ぎない。自分のためにしか動いてない、と言う。弟やアスペルガーをよく知る兄ゆえの発言だろう。
※セリフでは言ってなかったが、こういう前置きがあるように聞こえた。

しかし、果たしてそうなのだろうか?
あんなに手間をかけて、相手に思いやりがないと言い切れるのか?

シモンの行動は恩着せがましいかもしれない。でもそれが相手に向けて準備されたものであることは確かだ。それがどんな展開を及ぼすかは、やってみなければ誰にも分からないじゃないか。

対してシモンに会ったばかりのイェニフアーは、シモンの行動を兄への思いやりと捉えた。彼女は、アスペルガーについて多分あまり知識がない。しかしそのおかげもあって、シモンに対しタブーを恐れない大らかさがみられた。

■3.
シモンの家族としての兄の言葉には重みがある。でももしかしたら、近すぎて見えなくなっていることもあるのかもしれない。
対してイェニフアーは、シモンのことをよく知らない。しかし、だからこそ見えてくることがあるのかもしれない。

どっちにせよ、シモンの本当の気持ちは分からない。それでも、最終的に反対の意見を持つ二人が笑い合うところが、素敵だった。二人とも、シモンが好きなんだな、と思えるシーンだった。

人の本心が理解できない、ということはアスペルガーがなくてもあり得ることだ。みんなお互いの本心が分からないなりに、寄り添って生きている。お互いが理解できず、失敗することもある。それでも諦めず、相手の本当の気持ちを知りたい、と歩み寄っていくことで、人間関係や人生が何か良い方向に変わっていくかもしれない。そういった希望を持つことができた作品。

…ちなみにシモンはどこまで相手の気持ちが分かっているのだろう。シモンの頭の中を覗いてみたくなった。

■補足
感想ではないですが、このシモン役の俳優がのちのペニー・ワイズだとはビックリ仰天!そちらの映画も好きだけど人相が変わりすぎて爆笑🤣