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ノア 約束の舟のNMのレビュー・感想・評価

ノア 約束の舟(2014年製作の映画)
3.7
ただの聖書の再現ではなく、あの壮大なプロジェクトにはこんな裏エピソードがあったのかもねという創作。
舟作って、待って、救われる、かと思ったら色々トラブルが起こる。
グロ表現もあるので一応注意。人間も動物も死ぬ。
嫉妬、裏切り、逆恨み、殺し合い等々。

人間や、神の僕である天使たちの、ひたすらな祈りが胸を打つ。

ノアは神の声を聞くことができ、揺るがない信仰がある。
葛藤はあるものの、基本的にはひたすら神を信じているので判断に迷う必要がない。自分の希望よりも家族のお願いよりも神の使命を全うすることのほうが大事。

私にはノアのようには生きられない他の人々の葛藤が悲しかった。全員が神の言うことに従えるなら何も問題はない。

どうして僕にだけ妻が与えられないのかと不満を持つ次男ハム。
欲にまみれ全てを奪おうとするカイン。
子どもを産めない私は舟に乗る資格があるのだろうかと悩むイラ。

そしてそのノアも、使命を遂行しようとしてもできないこともある。
神の役にも立てず家族も悲しませ、自分に絶望する。

全てに神の計画がある。
神はサポートセンターではないので人間が電話をかけてもいちいち出てくれない。
だが時々、ごく稀に、敬虔に祈り続けた者に小さな光を見せることがある。
それはたった一粒の果実の姿をしていても、永遠の救済。
ある者はそれに気づき神に感謝する。ある者は自分の努力の成果だと思う。

運命の前には身を委ねるしかないのに、普通の人々にはそれがどうしても困難。
カインの、自分の意志で生きるということ自体は間違いだと思わないが、意志次第で必ずどうにかなると思い込むと辛くなってしまうだろう。

大いなる希望の物語であるはずだが、人間の小ささが私には悲しかった。
それでも私たちは生きていかなければならないんだろう。何度間違っても苦しくても恥ずかしくても、神が終わりにしてくれるまでは。
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