mitakosama

太秦ライムライトのmitakosamaのレビュー・感想・評価

太秦ライムライト(2013年製作の映画)
4.4
これは良い映画だった〜凄い切ないけど心にしみる。感情を鷲掴みにされたわ。

太秦の大部屋俳優の斬られ役を扱った物語。
これを実際に斬られ役人生を全うした福本誠三の初主演として制作している。
福本の人生そのもののストーリーで、これ以上無い宛て役となってる。

長らく時代劇制作のメッカとして栄えた太秦だが、昨今の時勢により制作は減少。
長年続く時代劇は下火になり、チャラい新人監督にタレント役者が幅を効かすようになる。
老年の大部屋俳優は太秦映画村のチャンバラショーで糊口を凌ぐが、どんどん居場所が無くなっていく。

そんな中、寡黙にチャンバラに向き合う老俳優・香美山(福本)に殺陣の弟子入りした新人女優サツキはその腕を見込まれ代演でから映画の主演に。スターへ上り詰める。
ベテラン俳優(松方弘樹)との競演で太秦に戻って来たサツキは、引退した香美山に復帰を促し斬られ役としてオファーする。…という話。

やはり福本誠三の素晴らしさを讃えんといかん。寡黙なキャラクターを存在感だけで充分表現している。もちろん彼が元々台詞回しが上手い訳ではなく、それ故に台詞が少ないのもあるだろう。
だがそれ以上に、無骨に斬られ役を通して来た役者の意地の様なモノがそのまま役に乗り移ってる。

ブッチャケ福本誠三の見た目も本当にお爺ちゃんなんだよ。顔も皺クチャだしアバラも浮いてるし。

もっと言えば、むかし僕も太秦映画村に行ったことがあるが「つまんねーな」って感想しか無かった。昨今の時代劇にも不満だが、昔ながらの時代劇に固執しているのも問題ありだと思ってる。
だが芝居としての殺陣が成熟された文化だということは判るし、それを受け継ぎ進化させて欲しいとは切に願う。
この映画には、時代劇の、チャンバラ映画の最も大切な部分を伝えてくれる。

若い世代との軋轢のシーンなど本当に見ていて本当に切なくなるが、それでも見てくれる人が居るということ。
全てがラストのチャンバラに結実していく。

本当にもう、クソカッッケェー!ラストのチャンバラが映画の中のシーンに切り替わる演出センスも素晴らしい。
他にも、サツキが迎えにいった香美山が、子供の頃を思い出し剣を振るうシーンとか泣けるほど良いシーンだ。

福本氏の想いを継いだような山本千尋も素晴らしい。彼女は本当に日本映画界の宝だと思う。
新しい時代に則した、本当のチャンバラ映画の復活を切に願う。
mitakosama

mitakosama