しろくま

太秦ライムライトのしろくまのレビュー・感想・評価

太秦ライムライト(2013年製作の映画)
3.8
2022.07.30/150/図書館DVD
〝銭形平次〟〝水戸黄門〟〝遠山の金さん〟など数々の時代劇で斬られ役を演じた福本清三さん主演による無名の老殺陣師香美山清一の生きざまにスポットを当てた映画。

時代劇の放送が減っていく中、太秦で時代劇を守る俳優やスタッフ、バックヤードが描かれ、実際に長年斬られ役を演じてこられた福本清三さんの演技にはリアリティがあり、殺陣のシーンには気迫がみなぎる。ヒロイン伊賀さつき(山本千尋)に殺陣を教えるシーンはまるで〝ベスト・キッド〟で、撮り直しが続いたさつきに喝を入れてからのV字回復に師弟愛を感じる。

昨年の11月から今年の4月まで放送された朝の連続テレビ小説〝カムカムエヴリバディ〟の京都編で、ヒロインひなた(川栄李奈)を条映映画村に誘った大部屋俳優・伴虚無蔵(松重豊)って福本さんがモデルじゃないかなって思って観ていたら、虚無蔵さんがハリウッド映画〝〟サムライ・ベースボール〟に出演のオファーを受ける展開に。これってやっぱ〝ラストサムライ〟に出演された福本さんがモデルで間違いないでしょ。虚無蔵さんの人生訓〝日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ〟は、殺陣の練習を怠らない福本さんのシーンと重なるし、ひなたが人生の選択で迷った時に〝そなたが鍛錬し培い、身につけたものはそなたのもの。一生の宝となるもの。されどその宝は、分かち与えるほどに、輝きが増すものと心得よ〟と言って後押しをしたのは、本作のヒロイン伊賀さつきが女優として成長するように見守る福本さんの姿とだぶる。どっちも渋くてかっこいい。あの田中泯さんとも似た雰囲気。
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