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グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札のhilockのレビュー・感想・評価

2.6
ハリウッドでの名声を捨てモナコ王室に嫁いだグレース・ケリーが王妃の時代に、何があったのか?私自身も興味があり鑑賞。まず、私が気になったのは本作の冒頭の『この物語は史実をもとにしたフィクションである』という言葉である。フィクションを再言及することは、これから映画という夢物語を紡いでゆく観客にとって全くもって不必要なことである。しかし、ケーリーグランド、ウィリアム・ホールデンなど有名俳優との浮名が新聞などを賑わしていた当時の情景がより想像される分、虚構の部分も存在し、そこから負の要素も見受けられるのは間違いない。敢えてこの言葉を付け加えることで、グレース・ケリーのシンデレラストーリーを壊すことなく、モナコ公国からの非難を避け、彼女のクール・ビューティを永遠のものにしたかった監督の意図が見え隠れする。
また、映画で描き方が甘かった箇所をあえて書くと、グレース・ケリーと父親の関係である。幼少期からグレースの姉に対して特別視していた父親。全く見向きもされない悲哀を、父に評価されたい一心で生きてきたグレース。この二人のわだかまりは永遠と続き、ハリウッドでの名声でも、父親は振り向いてくれなかった。その父親がようやくグレースを評価してくれたのは、父親に合うことのできない遠方モナコ公国へ嫁いだときであった。劇中でも実家に電話をするシーンがある。それを見ただけですべてを知りうるのは難しいが、涙の理由をより深く感じ入る重要な事柄でもある。愛ゆえにレーニエと婚約したのか?、父親を振り向かせたい故の行動なのか?これらを細部まで描くのは厳しい。しかし、これらを再現することで公国内での孤立、寂しさを、より際立たせるためのエッセンスになり得たのは間違いない。とても残念である。
それゆえ、父親から愛されてこなかったグレースの枯渇した心の内を、彼女が求める理想の父親像への求愛として年上のハリウッド男優(この当時のハリウッドは男優は老い、女性は若いという組み合わせか多い)に行き着くのも無理はない。妻子持つ相手とのゴシップに、幾分のファムファタール性も見受けられるが、偏愛にも似たファザコン的感覚が存在していると結びつくこともできる。公国と生きるという彼女の使命感は、役を演じる以上のものをそこに見出し、その後レーニエ公と人生を過ごしたということで微笑ましくもなるが、当時の公妃時代の何か虚ろげで、暗い部分をグレースに感じた私にとって、ミステリアスなところはまだ抜け切らない。・・・と、映画のクサシにも聞こえるが、グレース好きゆえの感想とご認識いただきたい。特にニコール・キッドマンの美しさは本当に素晴らしく、かなりのアップが多用されるが、パーツが似ているのか、一瞬見間違える時が数回ありました。カルティエの全面協力もまた、彼女の高貴さと相まっていました。
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