フライ

ファーナス/訣別の朝のフライのレビュー・感想・評価

ファーナス/訣別の朝(2013年製作の映画)
4.0
悲しい生き様と復讐劇を描いたストーリーだが、兎に角渋い!息子として、兄として、男としての真っ直ぐな優しさ、生き方が観ていて辛いし胸に来る!カッコよくは無いが、the男としての雰囲気と心意気が最高に好き!そこに渋い大物キャスト陣が余りにもマッチしていて楽しめた。

クリスチャン・ベールが演じるラッセルは、寂れた町に住み、父親も働いていた基幹産業である閉鎖寸前の製鉄所で働きながらも、病気の父親を見舞い、弟や恋人を大切にする優しい男。
ケイシー・アフレックが演じる弟のロドニーはイラクに出征し、心に傷を負い現実逃避をする様に借金をしながら競馬をしていたが、そんな弟を気づかい、ラッセルは借金の一部を返済する為、金貸しでバーを営むウィレム・デフォーが演じるジョンの元に行く。ジョンの事務所に行くとウッディ・ハレルソンが演じる女性にも平気で手をあげる悪の元締めデグロートと揉めていて、入って来たラッセルに不満を漏らす。ラッセルは、文句があるのか?と問うとデグロートは、世の中の全てに!と言って去る。その日ラッセルは酔っていたが、車に乗り帰路の途中バックして来た車に追突し死亡事故を起こしてしまう。刑務所に収監されたラッセルは、収監中に父親の死や、弟の再出征、恋人との疎遠などで不幸に追討ちをかけるが、出所後デグロートにより思わぬ形で更に人生を狂わされてしまう。

かなり言葉足らずな作品にも思えたが、寧ろそこに魅力を感じる作品にも思えた。そう感じるのは、圧倒的なキャスティングと素晴らしい演技演出が補完している意外の何ものでも無い様に思えた!

アメリカの寂れた町に住む優しい男性ラッセルが、アメリカの一地方の見捨てられた寂れた町と、同じ様に報われない展開が観ていて本当に辛い。そこに、町での生き方に馴染めない弟ロドニーが、出征と言う形でしか仕事を探せず心を病む展開が尚更悲しくも。
ラッセルの行動には不器用さと倫理観の無さも感じるが、生まれ育ちからの飲酒運転と、ラストの追い詰められての行動が、優しいラッセルの悲しい行動へと結び着いてしまい、えも言われぬ辛い気持ちにさせられた。
活気を無くした地方で、真面目に生きるだけでは幸せになれない姿と、更に閉鎖的な世界を利用した悪に翻弄されるラッセルにアメリカの地方の縮図を垣間見た気も。

始終ストーリーは淡々と進んで行くので、凄い面白いと言う作品では無いが、作品の中から色々なものを感じるのが好きなら楽しめるかと。特に寡黙な男の不器用で渋い生き方に心を動かされる人にはオススメ!
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