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ファーナス/訣別の朝のfilmoutのレビュー・感想・評価

ファーナス/訣別の朝(2013年製作の映画)
4.5
スコット・クーパーの描く物語はシンプルで単調に思えるけど重厚かつ乾いており、細かい描写で溢れている。
特筆すべきは物語のロケーションを広く視野に入れて、人物のみならず小さな町の信仰と概念を捉えるタカヤナギさんの撮影だと思う。
が、クーパーの映画作りが巧すぎる。
警官のウェズリー(フォレスト・ウィテカー)がラッセル(クリスチャン・ベール)にロドニー(ケイシー・アフレック)の事を伝えるシーンではラッセルの意識が飛んでいくように音がフェードアウトする。
冒頭の凶暴なウディ・ハレルソンがやや説明的すぎるが、映画の終盤、最終的に予測していないような気持ちになる。全体的にざらついた質感とトーン。
そういう細かい描写、表現が多い。
胸糞とかスカッととかカタルシスとか不条理とか単純に良かったとかそういうもののどれでもないあんまり感じたことのないような感覚で物語は終わる。
監督は俳優の声自体もいわゆるバンドのボーカルのような、一語ずつのそれではなく音として捉えているような気がする。
それらの音声にロケーションも相まってかなり乾いた印象を持つ。
トム・ウェイツのアルバムを聴いているような渋さだ。

そもそも個人的には家族や兄弟の話自体自分の琴線に触れるテーマではあるが、それでも映像、音、演技、タイミングなどあらゆる要素のバランスが絶妙。

何度も見たい一本。最高。
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