よしまる

007 スペクターのよしまるのレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
3.6
 前作よりサムメンデス続投で送るダニボンの集大成。さまざまな権利関係のイザコザからやむを得ず闇の組織となっていた(違w)スペクターの復活。クアンタムは何だったの??とは言わせない力づくの設定で、何もかもはスペクターの仕業だった、というところまでは良かったのだけれど。

 この続きはネタバレ注意とともに後ほどあらためて。

 ド派手なオープニングが代名詞となったダニボン、今作は髑髏姿のカーニバルから長回しを使って敵との遭遇までをリズミカルに演出。何がすごいって実はワンカットではなく3カットを繋いでるらしく、それを聞いて編集技術のうまさに唖然とした。そして後の「1917」を観るとこれが習作だったと気づく。
 しかしながらヘリ内での格闘がちょっと長くて、オチも地味。4作のうちでは一番カタルシスに欠けるオープニングだった。まあ前作「スカイフォール」が神すぎたよね。

 逆にアストンマーチンは大活躍で溜飲が下がる。シリアス一辺倒な前作から、ユーモアな要素をリアル路線ギリギリに保ちながらぶち込んできて、このあたりはハードボイルドなダニボンが好きだった方にはちょっといただけないところかもしれない。ボクは007らしさが戻ってきて好き。

 というところでここからは少しネタバレ気味に、イマイチ乗り切れなかったことについて記します。















 さて、ようやく版権問題も和解し、晴れて30数年ぶりに「スペクター」の名を使えるようになった本作。
 「ロシアより愛を込めて」以来6作にわたり登場したブロフェルドも再登場。ダニボンを苦しめたこれまでの強敵もすべてその手先だったことがわかり仕方なく代わりを務めていたwクアンタムは下部組織ってことになったのかな?
 つまるところすべてはスペクターを率いるブロフェルドがラスボスだった、まではいいのだけれど、、そいつが「実はボンドの幼馴染み」という設定には腰が抜けた。Mを守る名目で思わせぶりに生家に帰ったのも、この伏線だったというわけか。

 高価そうな白ネコちゃんを抱いてたり、頬に傷を残したり、ブロフェルドのアイコンも健在。とはいえ過去の映画にも小説にもない設定をさも元からあったかのように描かれても、一緒に育てられたボンドに妬みやそねみを持ち続けてきたことと、ソ連のスメルシ、ドイツネオナチ、イタリアンマフィアなどなど世界の名だたる悪の組織を牛耳ってきた黒幕が同じ人物というのがイマイチしっくり来なかったw
 いま考えるとスターウォーズのレイがアレの娘というのも後付け感が似ている。

 そしてボク自身の問題なのでそのシチュエーションが好きな方には申し訳ないのだけれども、主人公が気絶させられて拷問にかけられると、さめる。
 まあそれも歴代ボンドのお約束といえばその通り。こういうのはリアリズムを追求するほど、そうはならんやろと思ってしまうところが難しさかもしれない。そんな大物が、マドレーヌの小芝居とQの小道具で砂漠に隠された秘密基地を全滅させられるってどこがリアリズムやねん、ってなってしまう。

 遊牧民を避難させてまでギネスに認定されたという大爆発を、主役もカメラも安全なところで高みの見物しててどう楽しめるというのだろう?
 それこそ危機一発なw状況で爆発を免れるとか、もしダメならいっそQの時計がきっかけであそこまで被害が広がっちゃったよどうしよう😱くらいのことをしてくれても良かったんじゃないかなぁ笑

 あとは、まあまあ評価の分かれているのがレアセドゥ。ボクは好きなんだけれど、すでに枯れた味まで醸しているダニボンには不釣り合いというクレームも理解はできる。退場したのにとっ捕まって、敵も敵で殺せばいいものを生かしておくからこうなる、みたいな。どうもプロットがチグハグで話に乗っていけない。

 総括すると、スカイフォールの突き詰めたリアリズムに比べていろいろバランスが悪く、楽しみ方がわかりにくい映画、ということになるのだろうか。もしかすると当初は想定していなかった「スペクター」の復活がかえって混乱をきたしたという見方もできるのかもしれない。けしてクオリティが低いとかつまらないわけではなく、あくまでバランスの問題。

 ダニボン最終章「ノータイムトゥダイ」にもブロフェルドは再登場するらしいので、ここからどのように着地していくのか、やはり楽しみで仕方ないことに変わりはない。そして劇場で見届けるべき案件であることも。