前作『スカイフォール』が「ジェームズ・ボンドがスパイとは何者なのか考える映画」とすると、今作は「ジェームズ・ボンドがジェームズ・ボンドっぽいことをする映画」。
そうなると、「筋はめちゃくちゃだけど、美女と華麗なアクションがいっぱい出てきてサイコー!」みたいな感想しか書けなさそうですが、サム・メンデスが監督なので、そうは問屋がおろさない。
スパイ映画の「裏」をかいた『スカイフォール』のさらにその「裏」をかいたのが『スペクター』です。「裏の裏」は「表」なわけで、一見すると「昔のアレ」に見える。
でも、サム・メンデスは頭がいいので、「美女とワイン飲んで一夜をともにして、ついでに悪党を一捻り」なんて時代錯誤なダンディズムなんか信じてないし、荒唐無稽で無邪気に遊ぶほど子どもではない。
だから、楽しいイベント連発のように見えるけども、「まあ、一通りのことやっておきますよー」というような妙な雰囲気が漂っている。
ダニエル・クレイグのボンドはほぼ確実にこれで終わりだろうなぁ。次のボンドは、ガイ・リッチーかブラッド・バードが思いっきり荒唐無稽で遊べばいいと思う。