カルダモン

マッドマックス 怒りのデス・ロードのカルダモンのレビュー・感想・評価

5.0
公開初日、トム・ハーディ版に半信半疑のまま向かい見事なカウンターを食らった私。目玉が飛び出すかと思った。いや実際に私の目玉はかつてのトウカッターのように飛び出ていた筈だ。スクリーン以外のモノが視界に入らないほどの没入、あれはきっと目玉が出ていたのだ。

砂が目に入り、エンジンオイルと汗の匂いが鼻をつき、グリースが肌にへばりつき、カラカラの喉に水が染みわたり、V8のエンジン音が体を貫いた。なぜだか涙が止まらない、止まらない理由がわからない。まだタイトルが出たばかりだというのに。嬉しいのか悲しいのか、感情の出どころがわからない。ハイオクタンの血をブチ込まれたのだろうか。それとも首筋に焼印押されたのだろうか。次々に登場する狂った車両の数々、狂った人々の群れ、狂った世界が美しい。

何も無いシーンがひとつも無い奇跡のような造形美、これが一瞬一瞬の積み重ねであるという事実に震える。映画というものの成り立ち。アクション、音楽、美術、照明、衣装......etc......etc...まるで映画製作者達によるフルオーケストラをフルボリュームで浴びてるようだ。

480時間を超える膨大なフィルムを搾りに搾った2時間の結晶。ジョージ・ミラーの目玉が捉えた世界と、編集を担当した妻マーガレット・シクセルの仕事。この夫婦作業がMMFRの核であることに疑いはなく、妻でなければできなかった旦那のシェイプアップが凄まじい。。家庭内でのフュリオサはマーガレットであり、マックス・ロカタンスキーはジョージだった。

平成の一本は考えるまでもなくコレしかなかった。令和に持っていくべき平成の遺物、というよりそもそも改元など余裕で飛び越えていた。これから先の人生でこの映画ほどのショックは得られるかわからない。そう考えると実に罪深い作品とも言えるのだが、不感症の心身に対してさえ尚刺激を与えてくれる唯一の作品、その映画こそが『MADMAX FURYROAD』だという事実を受け止める。心に焼印を入れられて、これからもサバイブする。


2020/6/9
初4dx体験。コロナの影響によるリバイバル上映でスクリーン独り占めに近い状態での鑑賞。寂しい。霧のエフェクトがスクリーンの横から申し訳程度にポワンと出ては消えるのがとても寂しい。天井からの雨のエフェクトは良かった。
冒頭ウォーボーイズから逃げるマックスが水場に落下する時、イモータンが放水する時、ワイヴズが水を飲むシーン、嵐に突入のシーン。砂漠ばかりが広がるの中、水の効果は大きい。また爆風などの際、襟元に熱風が吹き付けられるのも効果的。
座席が動くのは映画の動きとあっているとは思えなかったので逆効果かも。足元をそよそよくすぐられるのは苦手。フラッシュはもっと光量上げて欲しい気持ち。