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マッドマックス 怒りのデス・ロードのqpismのレビュー・感想・評価

5.0
5回みたけどまだ上手くまとめられない。1回だけの人はまた観て欲しい。自分も初回は小さく叫びながら観た。でもそれ以降は緻密さに驚き慄き惹きつけられた。映画史初期のとんでもないサイレントや、旧スターウォーズの神話学に基づいた丁寧な物語と手作り感、幼児でも楽しめるのに大人は泣いてしまう宮崎アニメ。そんなことが脳裏をよぎる。以下意味不明な戯言。

これは映像を繋げて物語を描くという映画が誕生してから変わらない基本にとても忠実な新しい神話だと思った。人類は誕生以来、口承、文字の発明後は文章で物語ってきた。そして近代、映画が生まれ映像を繋げることで物語を描くという方法が出現。で今日に至るわけですがフューリーロードはほとんどサイレントなわけです。台詞は少ないしそもそも殆どカーチェイスなので台詞を挟めない。でも監督はただのアクション映画にはしなかった。観た誰もが「ヤバかった!」と言えるのは、人物たちの関係、感情、ストーリーがちゃんと伝わってくるからだ。

まず「見る、見られる」の関係。激しいアクション中も執拗に繰り返される視点の交差。主人公たちはガラスや隔たり越しに何度も見つめ合い切り返しそれがラストに繋がる。それだけで全てが語られているということが非常に映画的で感動する。ニュークスに至っては見られることがテーマのキャラクターで、だから最後のケイパブルとの切り返しは泣ける…ニュークス大好き…

そして贈与。例えばマックスとフュリオサの心が通い始めるのはどこからかと言うとマックスが1度奪った銃をフュリオサに渡すところから(その後の2人の共闘から音楽も感動的に盛り上がる!)。他にも例を挙げると靴やハンドル、種、血などなど。余計な説明はいらない、だって映画だから!という監督の愛にウルっとくる。


そしてこの映画が直感的で神話的なもう一つの理由に物語があって、これは監督がインタビューでキャンベルの「千の顔を持つ英雄」の影響を語ってた(この本はなかなか敷居が高いけど「神話の力」という本は文庫になってて買いやすいし読みやすいしめちゃくちゃ面白い)。神話的モチーフを意識した監督は直感的で、例えば宮崎駿が大人を泣かせつつ3歳児までも虜にしてしまうのは、モチーフが人類太古の記憶を否応なしに呼応させてしまうからだろう。「ポニョ 神話」などで検索してみると面白い(と思ってたらミラー監督がフェイバリットに千と千尋を挙げてた!嬉しい)。
で、FRにもモチーフは色々ある。3、贈与、身体的ハンデキャップ、老婆、帰還だったり。詳しくないので他にもあるのだとは思うけど。それにそもそもが神話的かつ宗教的なストーリーだしね。V8!

そんな映画としての緻密さにアクション、カメラ、スタント、VFXにデザインが合わさってこんな怪物のような作品が生まれた奇跡。CGにはない温かみ。素晴らしい役者の演技。

終始マックスが口の中で唸ってるの可愛い。マックスがスプレンディドに親指を立てるところ。フュリオサがメニーマザーズのポーズを思い出すところ。燃え尽きる発煙筒の暗闇に「お前は燃えているか?」と頭を殴られた。We are not things!
そう、私たちはモノじゃない!役割人間たちの復権の物語でもある!神さまありがとう!文句なしの5億点。1人でも多くの人が劇場で何度も観て映画の素晴らしさに触れられますように。

ちなみに最後の曲はなぜ日本版なのか。内容に合わせてスコアを作った人の努力が無駄になる。ドルビーアトモスで観たらオリジナルでほっとしたけど。そこだけ残念。
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