イチロヲ

ポルノの女王 にっぽんSEX旅行のイチロヲのレビュー・感想・評価

4.5
色恋とは無縁の生活を送ってきた全共闘世代の青年(荒木一郎)が、ヤクザと関係しているスウェーデン娘(クリスチナ・リンドバーグ)を拉致監禁してしまう。アメリカン・ニューシネマを引き継いでいる、東映ピンキー作品。

主人公と接触した娘クリスチナは、当時の日本が抱えていた「シラケ」の中に取り込まれて、共感性を実感していく。「みんな自由を求めてさまよっているのよ」とスウェーデン語で話すところに、すべてが集約されている。

荒木一郎のシラケた芝居が堂に入っており、まさに主演男優賞クラス。特殊極まりない思春期を過ごしたことにより、人間性が歪な方向に捻くれてしまった青年の悲哀。その心の機微が、ひしひしと伝わってくる。

当時のアングラ・ムーブメントが随所にフィーチャーされているところも醍醐味。もっとも、終盤にはお決まりの展開が待っているわけだが、役者陣のエモーショナルな演技にグイグイと引っ張られる感覚が気持ちいい。
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