bluetokyo

天使のはらわた 赤い淫画のbluetokyoのレビュー・感想・評価

天使のはらわた 赤い淫画(1981年製作の映画)
2.9
石井隆はぶれない。のちの傑作映画を生み出す下積み。この作品はフィギュアなあなたのもとになったのかな。
すべては村木の妄想説。
土屋名美と女子高生の自慰には誰も登場しないのに、村木の自慰には土屋名美が登場するのだ。この土屋名美こそが妄想内で生み出した土屋名美である。土屋名美が誰かに尾行されていたり、電話が掛かってきたり、結局、誰だか、わからない。果ては不倫中の上司の机に土屋名美が無理やり写真を撮られて作られたビニ本が置かれていたが、これも誰だか、わからない。もちろん、犯人は村木なのだ。妄想内での犯行なので経緯がすっ飛んでいる。
赤い淫画というお気に入りのビニ本を見てすべてを妄想している村木。おそらく、そのビニ本に、写っている女はデパート勤務とか、書かれてあったのだろう。そこから、デパートに勤める土屋名美を妄想したのだ。
はっきりと実在する村木はもう一度、登場する。それは大家のおばさんに隣の女子高生への覗きを疑われて咎められているシーン。ここで、大家のおばさんをレイプする妄想をしている。ということは、ここでの大家のおばさんと村木は実在するのだ。
村木が土屋名美を追っかけ回すシーンも妄想染みている。電車に乗って、扉が閉まる寸前で土屋名美はホームに出て、車内に村木が取り残されるのだが、それでも、追いかけてくる。実際、あり得ないが妄想だから可能なのだ。
そこで土屋名美が落とした定期券を手に入れる。上北沢、新宿とある。土屋名美は上北沢に住んでいる。まあ、ここらへんはどこまでが、妄想で、どこまでが、現実かわからない。
隣の女子高生が殺された上に強姦されたのは妄想だろう。犯人が誰か不明で化け物みたいだからだ。覗き見の痴漢と訴えられたことに対する報復を脳内で決行したのである。女子高生の父親が怒って村木を猟銃で撃つわけだが、これも妄想だろう。失業状態で生活も破綻していたので何事かあったのだろう。定期券も傘もどこからか手に入れていて妄想の道具になっていたのかもしれない。
村木は瀕死の状態で待ち合わせ場所までなんとか辿り着くがそこで絶命して映画も終わる。妄想していた本人があの世に行ってしまったので、妄想の産物である映画も終了というわけである。点は石井隆が監督ではないし、習作という段階なので低くしてある。石井隆の最高傑作はやはりヌードの夜だ。
bluetokyo

bluetokyo