ガリガリ亭カリカリ

狂った果実のガリガリ亭カリカリのレビュー・感想・評価

狂った果実(1981年製作の映画)
4.8
2015年に新文芸坐の特集「愛と官能のシネアスト」で『ラブホテル』と二本立てで観たが、あまりにも面白くて午前中から夜にかけて計3回続けて観た(寝坊しそうだったので前夜に池袋のネカフェに泊まったのも憶えている)。

石原裕次郎主演の同名作品『狂った果実』では金持ち兄弟同士の対立が描かれていたが、こちらは貧困層と富裕層、しかも貧乏な男と金持ちの女のアンバランスな関係性が揺らぎ続ける経済格差ロマンポルノ。

貧困ゆえにウロウロしまくる本間優二と、妖艶でフワフワと浮遊しているような蜷川有紀。全く正反対の主演二人が、文字通り磁石のN極とS極のように惹かれ合っている、と思わせておいて、まるで「お前は磁石じゃなくて石ころなんだよバーカ」と突き付けるかのような悲劇へと猛進していく。
クライマックスで駆動し始めるバイオレンスの連鎖。血と暴力の連鎖反応の末に、主人公が迎える不発と終焉のラストショットが超素晴らしい。
ものすごい速度で走っていたら、走り切ってしまって、もう立ち止まるしかない虚脱感。

主人公が働くピンサロの店主・益富信孝と永島瑛子の夫婦がめっちゃいいキャラをしている。というか脇含めてキャスティングが良すぎる(岡田英次もいる)。

「だから徹底的にからかいたいんですよ」

「ホントは、きっと好きだから。好きだから虐めたいってこともあるんですよね」

「今度さ、俺、夏のボーナスもらったらクーラー買ってやるよ、クーラー。嫁さん?いいよ、そんなの」

あんたら悲しすぎる!!😭